4. 年金を早く受け取るための工夫
年金を60歳時点から受け取りたい場合は、公的年金以外の年金を用意して、60歳から受け取るようにするのが望ましいでしょう。
たとえば、自分で掛金を拠出して運用し、年金として受け取る制度である「iDeCo」は、原則60歳からの受け取りです。60歳になった時点で運用したお金を受け取るようにすれば、繰上げ受給をしなくても安定した収入を得られます。65歳から公的年金も受給し始めれば、収入がさらに増えて老後生活にゆとりを持てる可能性もあるでしょう。
また、個人年金保険も有効です。個人年金保険は、以下のように年金の受け取り形式を自在に選べるのが強みです。
- 有期年金:生存している限り、一定期間受給し続けられる年金
- 確定年金:生死にかかわらず、一定期間受給し続けられる年金
- 終身年金:生涯にわたって受給し続けられる年金
受け取り始める期間を60歳に設定しておけば、60〜65歳の期間の収入を確保できます。老後生活の序盤である60代を個人年金で乗り切り、70代以降から公的年金を受給し始めるといったプランニングも可能です。
私的年金を用意しておけば、退職後も安定した収入が得られ、繰上げ受給せずとも家計のやりくりができるでしょう。
5. まとめ
年金の繰上げ受給は、早期に年金を受給し始められる分、年金の減額や支給停止の可能性などさまざまなデメリットがあります。十分な貯蓄や公的年金以外の年金資産を用意できていれば、繰上げの必要はありません。繰上げ受給を検討する際は、デメリットを理解したうえで慎重に判断しましょう。
参考資料
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
- 日本年金機構「65歳前に老齢年金の受給を繰上げたいとき」
- 厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)3月分及び2024年度(令和6年度)平均」
- 日本年金機構「任意加入制度」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- 日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」
- 日本年金機構「年金の併給または選択」
石上 ユウキ