筆者は元信用金庫職員ですが、偶数月の15日は年金支給日と重なることが多く、ATMや窓口にお客様が集中する光景が思い出されます。
かつて金融庁から「老後2000万円問題」が提起されましたが、「年金以外に2000万円もの老後資金が、本当に必要なのか?」といったご相談も多く受けます。
実は「老後2000万円問題」の試算のもとになったのは2017年の家計調査の結果です。その後の物価上昇などを踏まえると、さらに老後資金が必要であるとの声も聞こえます。
安心できるセカンドライフのために、世帯の状況に合わせた老後資金を準備していきたいものですね。今回は、65歳以上世帯の家計収支・貯蓄データをのぞいていきます。
いまのシニア世代の「平均」を見ることで、現役世代のみなさんが老後への備えをすすめるヒントになればと思います。
1. 65歳以上の無職夫婦世帯「ひと月の家計収支を見る」赤字はいくら?
2025年3月11日、総務省統計局は「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」を公表しました。
ここから、65歳以上無職夫婦世帯のひと月の家計収支データをのぞいてみましょう。
毎月の実収入:25万2818円
■うち社会保障給付:22万5182円
毎月の支出:28万6877円
■うち消費支出:25万6521円
- 食料:7万6352円
- 住居:1万6432円
- 光熱・水道:2万1919円
- 家具・家事用品:1万2265円
- 被服及び履物:5590円
- 保健医療:1万8383円
- 交通・通信:2万7768円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万5377円
- その他の消費支出:5万2433円
- 諸雑費:2万2125円
- 交際費:2万3888円
- 仕送り金:1040円
■うち非消費支出:3万356円
- 直接税:1万1162円
- 社会保険料:1万9171円
毎月の家計収支
- 3万4058円の赤字
この世帯の場合、支出の合計は28万6877円。そのうち社会保険料や税などの「非消費支出」が3万356円、いわゆる「生活費」にあたる消費支出が25万6521円です。
一方で、ひと月の収入は25万2818円。その約9割(22万5182円)を社会保障給付(主に公的年金)が占めますが、結果的には毎月3万4058円の赤字となり、貯蓄の切り崩しなどでカバーすることが必要です。
ただし上記の支出の内訳には「介護費用」がなく、住居費も1万円台となっています。世帯構成や健康状態により、さらに上乗せの出費を想定しておく必要もあるでしょう。
そこで次では「老齢年金世代」の貯蓄事情について見ていきます。