4.2 繰上げ受給は「年金額が減る」制度
繰上げ受給は、通常の65歳より前に年金の受け取りを開始する代わりに、前倒しした月数に応じて受給額が減額される制度です。
減額率=繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数×0.4%(最大24%)
- (例1)64歳から受け取った場合・・・0.4%×12ヵ月=4.8%減
- (例2)60歳から受け取った場合・・・0.4%×60ヵ月=24.0%減
繰上げ受給のメリットは、年金を早く受け取れる点です。
例えば、60歳で定年退職し、65歳までの生活が厳しい場合には、繰上げ受給を選択肢として検討することが考えられます。
ただし、繰上げ請求を一度行うとその取り消しはできません。
また、減額された年金額は65歳以降も一生変わらず、国民年金の任意加入や保険料の追納ができなくなるなどのデメリットもあるため、十分に理解した上で決断することが重要です。
※1 老齢基礎年金の繰上げには「全部繰上げ」と「一部繰上げ」があり、特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢の特例に該当しない場合は、全部繰上げとなります。
※2 昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は、0.5%(最大30%)となります。
※3 年齢の計算は「年齢計算に関する法律」に基づいて行われ、65歳に達した日は、65歳の誕生日の前日になります。
(例)4月1日生まれの方が65歳に達した日は、誕生日の前日の3月31日となります。
※4 特別支給の老齢厚生年金を受給できる方の老齢厚生年金の減額率は、特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢に達する日の前月までの月数で計算します。
5. まとめにかえて
今回は、65歳以上のおひとりさまシニアの家計事情や年金事情について見てきました。
総務省統計局のデータによると、おひとりさま世帯の家計収支の平均は、毎月の支出が収入を上回る赤字家計でした。
赤字を補填するために、毎月、貯蓄を取り崩す必要があります。
おひとりさま世帯の場合、老後に介護が必要になった時、第三者の手をかりることは避けられません。
仮に、施設に入るとなると数百万円から数千万円単位のお金が必要になるケースもあります。また、賃貸住まいの場合には、持ち家の方と違い住居費が家計の負担になることも考えられます。
いまは、おひとりさまの生活を楽しむ方も多いですが、おひとりさまで老後を迎えるのであれば、老後に何が起こっても自分ひとりできちんと対応できるだけの「備え」が大事です。
まずは、ひとりで老後を迎えた時に備えておくべきリスクについて紙などに書き出し、そのリスクに備えるにはいくらお金を貯めておくべきか計算しましょう。
老後資金として準備すべき金額が明確になったら、現役時代の今からコツコツと準備を始めておくと安心した老後を迎えられるでしょう。
参考資料
- J-FREC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](2024年)」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
鶴田 綾