3. 【繰下げ受給】シミュレーション「本来の年金月額15万円」はいくらに増える?
ここからは、繰下げ受給した場合の「累計受給額」を。繰上げ受給の場合と、本来(65歳)受給の場合と比べてみましょう。「60歳・65歳・70歳・75歳・80歳・85歳・90歳」の各年齢で年金を受け取り始めた場合の、「累計の受給額」を比べてみたいと思います。
厚生労働省年金局の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金部分を含む)の平均月額は14万6429円。
ここでは本来の年金額が「15万円」だった場合を想定して、受給開始年齢を5歳刻みでシミュレーションします。
まず、受給開始年齢が65歳、70歳、75歳で、年金月額は以下のように変わります。
3.1 繰下げ受給「年金月額はこう変わる」
- 65歳から:15万円(本来受給)
- 70歳から:21万3000円(増額率42.0%)
- 75歳から:27万6000円(増額率84.0%)
次に、各年齢での累計受給額を比べてみましょう。
3.2 繰下げ受給「60歳・65歳・70歳・75歳・80歳・85歳・90歳」各年齢での累計受給額&損益分岐点はいつ?
70歳・75歳の時点でもっとも累計受給額が多いのは「繰上げ受給」ですが、80歳時点では本来の「65歳から受給」が最も年金額が多くなり、85歳以降では「繰下げ受給」の方が多くなっていますね。
繰下げ受給の損益分岐点(※)は、70歳で繰り下げた場合は「81歳11カ月」、75歳まで繰り下げた場合は「86歳11カ月」です。
世帯の資産状況と健康状態を考慮して、ベストな受給タイミングを見つけていけたら良いですね。
※累計受給額が、本来の65歳で受給した場合とほぼ等しくなるタイミング
4. 繰下げ受給「注意点や意外な落とし穴も知っておこう」
今回は、老齢年金の「繰下げ受給」の基本を整理したあと、年金額のシミュレーション結果も紹介しました。
収入・貯蓄面で余裕があり、かつ健康状態に自信がある場合なら、活用を検討しても良いかもしれませんね。
ただし、加給年金額や振替加算額は増額の対象外となり、繰下げ待機期間中は、加給年金額や振替加算の受給もできません。
また、65歳以後に厚生年金保険に加入していた期間がある場合や、70歳以後に厚生年金保険の適用事業所に勤務していた期間がある場合に、在職老齢年金制度により支給停止される額は増額の対象外となります。
また、年金額が増えた結果、特別徴収(天引き)される税金や社会保険料が増えて手取りが減ってしまうケースがあることも、意外な盲点かもしれません。
メリット・デメリットを比較しながら、ライフスタイルに合わせて慎重に検討する必要があるでしょう。
参考資料
吉沢 良子