「物価の高騰」や「年金の実質的な目減り」が続く中、年金で生活するリタイア世帯にとって、経済的な厳しさが一層深刻化しています。

実際に、厚生労働省の「2023年 国民生活基礎調査の概況」によると、100%年金のみで生活している人は「41.7%」にとどまっており、シニア世帯の半数以上が「年金だけでは生活の維持が難しい」と感じていることを示しています。

では、リタイア前の現役世代は「金銭面でどのような不安」を抱え、「老後」についてどのように考えているのでしょうか。

本記事では、資産形成に関する実態調査を基に、「老後のお金」について考えていきます。

リタイア世帯の家計収支や、各年代の貯蓄状況についても実際の統計データを元に紹介しているので、あわせて参考にしてください。

1. 年代を問わず「老後資金」が最も大きな不安要素となっている

三井住友信託銀行株式会社が設置している「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、全国の18歳〜69歳を対象としたアンケート調査を実施しています。

調査概要は下記のとおりです。

  • 調査名:「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2025年)
  • 調査対象:全国の18~69歳 ただし関連業種(金融、調査、マスコミ、広告)従事者を除く
  • 調査方法:WEBアンケート調査
  • 調査時期:2025年1月
  • サンプルサイズ:1万1435
  • リリース公開日:2025年3月27日

調査の結果、年齢に関係なく「老後の資金」が最も大きな不安要素であることが明らかになりました。

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」では、過去6回にわたり同様の調査を実施していますが、この傾向に大きな変化は見られません。

さらに、「老後資金に不安を感じる」と答えた人に理由を尋ねたところ、幅広い年齢層で「老後の生活費がどの程度必要なのかわからない」という意見が多く挙げられました。

特に若年層では、「年金がどれくらい支給されるのかわからない」「そもそも年金を受け取れるのか不安」といった回答が目立ちましたが、これらの回答は年齢が上がるにつれて減少する傾向が見られました。

1.1 約半数が「自分に必要な老後資金の額が分からない」と回答

三井住友トラスト・資産のミライ研究所が行った同調査によると、「老後資金(公的年金とは別に自分で準備するべき金額)」について、どの年代でも40%から50%の人が「分からない」または「見当がつかない」と回答しました。

また、老後の生活費についても明確な見通しを持っていない人が多く、回答者の約半数(49.0%)が「分からない」または「回答を控えたい」と答えています。

リタイアを意識し始める50歳代においても、「分からない・回答を控えたい」と答えた人の割合は約50%にのぼり、年齢が上がっても「具体的な見通しを立てられていない人」の割合が大きく減少していない点が特徴的です。

では、すでにリタイアをしているシニア世代の実際の「老後の生活費」はどのくらいなのでしょうか。