6. 老齢年金世代が「年金ではゆとりがない」と感じる理由

6.1 シニア世代の約3割が「年金だけでは日常生活費もカバーできない」現実

金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査 2024」によると、60歳代世帯の約33%、70歳代世帯のおよそ31%が、「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と感じていることが明らかになりました。

「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?

「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?

出所:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」をもとにLIMO編集部作成

また、年金生活に不安を抱く主な理由としては、「物価上昇等により費用が増えていくとみているから」が最多で、60歳代の63.3%、70歳代では62.8%が該当しています。

加えて、「高齢者への医療費の個人負担が増えるとみているから」と答えた人は60歳代で28.3%、70歳代で34.8%。「高齢者への介護費の個人負担が増えるとみているから」と、介護費用の増加を懸念している人も60歳代で18.1%、70歳代で26.4%と、健康や介護をめぐる支出への警戒も高まっています。

日々上がり続ける物価に加えて、将来の医療・介護リスクが家計に重くのしかかる中、多くのシニア世帯が、見えない将来への不安を抱えながら生活しているのが現状です。

次章では、今のシニア世代の「実際の年金額」データを見ていきます。

7. 老齢年金の「平均月額」や「個人差」を一覧表でチェック

国民年金・厚生年金「平均月額や個人差を見る」

国民年金・厚生年金「平均月額や個人差を見る」

出所:厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」

厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2023年度末の国民年金・厚生年金(※)の平均年金月額は以下の通りです。

※厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。また、厚生年金の月額には国民年金(老齢基礎年金)部分が含まれています。

7.1 国民年金(老齢基礎年金):平均年金月額

〈全体〉平均年金月額:5万7584円

  • 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万5777円

7.2 厚生年金(国民年金部分を含む):平均年金月額

〈全体〉平均年金月額:14万6429円

  • 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
  • 〈女性〉平均年金月額:10万7200円

つまり、基礎年金だけを受給する場合は月額5万円台、会社勤務を経験した人が受け取る厚生年金(国民年金部分を含む)の場合は、男性で月額16万円台、女性で10万円台が平均的な水準となっています。

ただし、年金額には大きな個人差があり、月1万円に満たないケースもあれば、30万円を超える人も存在します。その差は、現役時代の就労形態や収入、加入年数などにより生まれます。

将来に備えるには、自分が受け取る年金の見込み額を把握することが重要です。「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」を活用し、将来の収入設計を一度見直してみましょう。