投資をリスクと考えなくなってきた
投資に対してどんなイメージをお持ちでしょうか。儲けることをイメージしたり、ギャンブルだったり、損失をイメージしたりする人もいます。その投資に対するイメージは、年々変化していることが分かってきました。
フィデリティ退職・投資教育研究所が2010年から行っているサラリーマン1万人アンケートでは、毎回「投資という言葉にどんなイメージを持っているか」を聞いています。設問では、8つの選択肢、「楽しい」、「前向き」、「儲け」、「明るい」、「リスク」、「怖い」、「損失」、「ギャンブル」から1つを選んでもらうようにしています。
そのなかでこの8年間「リスク」が常にトップを占めています。しかしその比率は2010年の50.8%から2018年には35.7%へと大幅に低下しています。一方、「怖い」、「損失」、「ギャンブル」のネガティブ・イメージの3つは合計で26.3から32.1%と大きく変わりません。
「リスク」の比率が減った分、増えているのが「楽しい」、「前向き」、「儲け」、「明るい」の4つを合わせたポジティブ・イメージを持つ人の比率です。2010年の22.8%から32.2%へと毎年ジリジリと増加しています。
時代背景で変わる投資への考え方
こうした変化の背景として、アンケート結果から3つの点が指摘できそうです。下のグラフは5歳刻みでみた年代別「投資という言葉に対するイメージ」を、2010年と2018年のデータで比較したものです。これをみると、すべての年代でポジティブ・イメージが増えています。
第1の背景は、アベノミクス相場で2012年10月の日経平均8000円台から上昇に転じるなかで、投資に対する相対的にポジティブ・イメージが増えていることでしょう。
第2は、バブル崩壊からの株式市場の長期大幅下落を社会人として経験していない人が増えていることです。2018年のデータでは、40歳あたりにポジティブ・イメージの段差があります。2010年には同様の段差が35歳あたりにあります。この段差は社会人生活をスタートさせたのが2000年より前か、後かにあるようです。
バブル崩壊、株式相場の下落一辺倒を社会人としてみてきた40代、50代と、その後の下落・上昇だけを知っている20代、30代という世代の持つ特徴です。今後はさらにこうした相対的ポジティブ・イメージを持つ世代が社会人の中核を占めていくことになります。
積立投資が変える投資への考え方
第3は、20代、30代で「楽しい」というイメージが多くなっていることです。これは2014年のNISA(少額投資非課税制度)導入、2017年のiDeCo(個人型確定拠出年金)の対象者拡大、2018年のつみたてNISAの導入など積立投資の認識が増えたことが影響しているように思われます。
2018年のアンケート調査では、こうした口座開設者ごとに投資に対するイメージを分析していますが、iDeCo加入者のポジティブ・イメージは49.8%(うち「楽しい」が11.8%)、一般NISA利用者では55.3%(うち同10.9%)、さらにつみたてNISA利用者ではなんと73.1%(同21.3%)に達しています。
前回の記事でも指摘しましたが、積立投資が投資のイメージも大きく変えつつあるようです。
<<これまでの記事はこちらから>>
合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史