株式相場に対してどんなイメージをお持ちでしょうか。日経平均を参考にすると、年配の方であれば1989年12月に付けた3万8900円強のピークを承知でしょうから、“30年近くその水準を上回れない”という評価になるでしょう。一方で、2003年の4月に付けた7600円強の最安値からすると“3倍くらいになった”ともいえますね。
フィデリティ退職・投資教育研究所が2010年から行っている「サラリーマン1万人アンケート」では、毎回「あなたは現在投資を行っていますか」という設問を用意しています。
ボックス相場を前提にした投資行動だったか
各調査実施時期の日経平均の終値の平均値をとって、その動きと「投資をしている人の比率」の推移をみたのが下のグラフです。このグラフをみると、2016年までの動きと2018年の調査結果が違っているように見えます。
2010年から2016年までの調査では、日経平均が上昇すると「投資をする人の比率」が低下し、日経平均が下落するか上昇が鈍化すると「投資をする人の比率」が上昇しました。これは、投資をしている人が株式相場にあまり信認を置いていない証拠のように映ります。
すなわち、“株価が上がれば売却し、下がれば買いに出る”といった株式相場がボックス圏の動きをするとの前提で投資行動をとる「相場をみる投資家」が多かったのかもしれません。
投資から資産形成へ
ところが2018年4月に実施した調査結果は、それまでとは違って日経平均が上昇するなか「投資をする人」の比率が上昇しているのです。株式相場への信認が高まっているとみることもできますが、むしろ相場に左右されない投資方法が広がっている結果かもしれません。
少額で行う積立投資ならば相場の上昇・下落は「投資をする人」の比率にあまり影響を与えないはずです。相場が上昇してもそれで手仕舞うのではなく、それでも投資を継続するといった行動が相対的に増えてくるはずです。
投資をするという行動が、株式相場に左右されない、継続的な行動になってきているとすれば、注目できます。投資ではなく資産形成に変わってきていると言い換えることができるかもしれません。
2014年のNISA(少額投資非課税制度)の導入、2017年のiDeCo(個人型確定拠出年金)の適用範囲拡大、2018年のつみたてNISAの導入など、積立投資というキーワードが広がってきている表れではないでしょうか。
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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史