3. 老後の生活支出にゆとりを持つ方法
人事院の「令和5年 退職公務員生活状況調査報告書」によれば、公務員が定年退職前に知っておけばよかったと思うことは「年金・保険に関する情報」が51.6%「資産運用に関する情報」が44.6%と上位を占めています。
ここでは、年金・保険・資産運用の観点から、老後生活に向けて見直すべきポイントやチャレンジすべき対策を紹介します。退職前に後悔しないようお金に関する知識を身につけ、老後の生活支出にゆとりを持ちましょう。
3.1 年金に関する工夫
年金に関する工夫や対策としては「定年退職後の国民年金の任意加入+付加年金の活用」に挑戦してみましょう。
公務員は国民年金と厚生年金の2つに加入し、65歳から基礎年金と厚生年金を受給します。厚生年金は定年後も働けば増やせますが、なかには働かないで暮らそうと考えている人もいるでしょう。
そこで活用したいのが、国民年金への任意加入制度と付加年金制度です。
国民年金には受給額の上限があります。上限に達するには、480ヶ月(40年間)の国民年金加入が必須です。公務員になった人のなかには、大学卒業後に就職した人もいるでしょう。
大学卒業時点での年齢は最低でも22歳のため、60歳で退職すると、2年間国民年金に加入していない時期が生まれてしまいます。
任意加入制度は、60〜65歳で国民年金の加入期間が480ヶ月に満たない場合に国民年金に加入して保険料を納めることで、基礎年金受給額を満額に近づけられる制度です。
これを活用すれば、年金受給開始までに満額の基礎年金を受け取れるでしょう。
また、毎月400円の保険料を追加で支払うことで、受給時に「付加保険料納付月数×200円」の年金が上乗せされる付加年金も、任意加入制度と併せて活用できます。付加年金は2年受け取れば元を取れるため、得する可能性のある制度です。定年後に働かないのであれば、ぜひ試してみましょう。
3.2 保険契約に関する工夫
保険契約は退職前から見直しておくのがおすすめです。退職が近づく年齢になると、子どもが独立している人も多いでしょう。そのため、現行契約が過剰な保障内容となっている可能性があります。
保険金額や保険会社など、根本から見直すことで、毎月の保険料支払いを安く済ませられます。保険を退職後の生活に合う保障内容に変えて、老後に備えながら支出を抑える工夫をしてみましょう。
3.3 資産運用に関する工夫
資産運用はNISAの活用がおすすめです。運用益はすべて非課税となるため、資産の取り崩しも税金を気にせずに行えます。
資産運用に関する知識が少なく「運用が退職直前になってしまった」「運用開始が退職後からとなる予定だ」という人もいるでしょう。
しかし、NISAは18歳以上であれば口座開設できます。また、一度開設すれば恒久的に使えるため、生涯にわたって資産運用ができます。
現役のうちからさらなる資産を用意しておきたいのであれば、iDeCoの活用もおすすめです。iDeCoは掛金がすべて所得控除の対象となるなど、税制優遇に強みのある制度です。
運用したお金は年金形式・一時金形式のどちらかで受け取れるため、退職後の収入や貯蓄の確保にもつながります。
公務員は法律で副業禁止となっていますが、資産運用については禁止の対象ではありません。現役の頃から資産運用しておけば、退職時に多くのお金を用意でき、老後の生活支出にゆとりを持てるでしょう。
4. まとめ
公務員の多くが、老後生活に困らないように働き続けようと考えています。退職すれば収入源が給料から年金にシフトしていくため、安定した収入や十分な資産がないと、早々に苦しい生活を強いられてしまいます。
現役の頃から年金や退職手当だけに頼り切った老後生活にならないよう、保険の見直しや資産運用などで備えておきましょう。
参考資料
- 人事院「令和5年 退職公務員生活状況調査報告書」
- 内閣官房「高齢政策」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「任意加入制度」
- 日本年金機構「付加保険料の納付」
石上 ユウキ