日本年金機構は2025年4月1日に「令和7年4月分からの年金額等について」を公表しました。

これによると、2025度の年金額は前年度に比べ1.9%の引上げです。以下は年金額の例です。
 

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額)):6万9308円(月額)
  • 厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額):23万2784円(月額)

上記の金額はあくまで例です。将来、年金をいくら受け取れるかは現役時代の働き方や収入に応じて個人間で異なります。
 
たとえば、フリーランスや自営業の方は受け取れる年金の種類が国民年金のみになるため、ひと月の年金額は5万円から6万円ほどという方もいるでしょう。
 
公的年金を含む所得金額が一定基準額以下の方を対象に、「年金生活者支援給付金」という制度があります。今回は、この給付金について詳しく解説していきます。

1. 「年金だけでは日常生活費もカバーできない」シニアのリアルな声

金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査 2024」では、二人以上世帯のうち60歳代の32.6%、70歳代の30.6%が、「年金だけでは日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答しています。

「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?1/7

「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?

出所:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」をもとにLIMO編集部作成

また年金ではゆとりがないと考える世帯が「不安を感じる理由」は「物価上昇で支出が増えると見込んでいるから」がトップに。60歳代で63.3%、70歳代で62.8%にのぼります。

次いで「医療費の個人負担が増えるとみているから」は60歳代で28.3%、70歳代で34.8%、「介護費の個人負担が増えるとみているから」は60歳代で18.1%、70歳代で26.4%。止まらぬ物価上昇に家計が圧迫される中、健康や介護面での不安を抱えながら、切実な思いで過ごすシニア世帯の存在があります。

2. 「年金生活者支援給付金」の対象者ってどんな人?

それぞれの年金生活者支援給付金について、支給要件を見ていきます。

「年金生活者支援給付金」は3種類3/7

「年金生活者支援給付金」の支給要件

出所:厚生労働省「「年金生活者支援給付金制度」について」

2.1 「老齢年金生活者支援給付金」の支給要件

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は88万9300円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は88万7700円以下(※2)である。

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で78万9300円を超え88万9300円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で78万7700円を超え88万7700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金(※3)」が支給されます。

※3「補足的老齢年金生活者支援給付金」とは?

老齢年金生活者支援給付金は、一定の所得以下の年金受給者に向けた制度ですが、基準額を少しでも超えると給付対象外となり、基準額ギリギリで給付対象となる人よりも総所得が低くなる逆転現象が起こる問題がありました。

この不公平を解決するために「補足的老齢年金生活者支援給付金」が設けられています。補足的老齢年金生活者支援給付金は、所得が基準額を超えても一定範囲内であれば受給でき、所得が増えるにつれて給付額は減少するしくみとなっています。

2.2 「障害年金生活者支援給付金」の支給要件

  • 障害基礎年金の受給者である
  • 前年の所得(※)が472万1000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額)

※ 障害年金等の非課税収入は除く

2.3 「遺族年金生活者支援給付金」の支給要件

  • 遺族基礎年金の受給者である
  • 前年の所得(※)が472万1000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額)

※ 遺族年金等の非課税収入は除く

それぞれの給付金において、上記の要件をすべてを満たす場合に「年金生活者支援給付金」の支給対象に該当します。

次では、2025年度の公的年金額についても見ていきましょう。

3. 【盲点】2025年度の年金額「増えても実質目減り」のワケ

公的年金は賃金や物価を考慮して年度ごとに見直しがおこなわれます。2025年1月、厚生労働省は2025年度(令和7年度)の年金額を、前年度より1.9%引き上げることを公表しました。

3年連続のプラス改定にはなりましたが、「マクロ経済スライド(※)」によって物価上昇率を下回る改定率となっており、実質的には年金額は目減りしています。物価上昇に年金額が追い付けていないのです。

またシニアの多くは、下記の税や社会保険料を老齢年金からの天引きで納めています。

年金から天引きされる税や社保が記載される「年金振込通知書」5/7

年金から天引きされる税や社保が記載される「年金振込通知書」

出所:日本年金機構「年金振込通知書

  • 介護保険料
  • 公的医療保険(国民健康保険・後期高齢者医療制度)の保険料
  • 個人住民税および森林環境税
  • 所得税および復興特別所得税

年金見込み額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できますが、年金は「額面通りにはもらえない」点は意外な盲点かもしれません。

※マクロ経済スライドとは:「公的年金被保険者(年金保険料を払う現役世代の数)の変動」と「平均余命の伸び」に基づいて設定される「スライド調整率」を用いて、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するしくみ

4. 年額最大約6万円!6月支給分から「年金生活者支援給付金」は増額へ

公的年金(国民年金・厚生年金)と同じく、年金生活者支援給付金制度の給付額は毎年度改定されます。

2025年度分は、前年の物価変動率に基づき2.7%の引き上げが決まりました。

4.1 【2025年度】年金生活者支援給付金の給付額

年金生活者支援給付金の給付額

年金生活者支援給付金の支給金額

出所:厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は前年度から 1.9%の引上げです~

 

  • 老齢年金生活者支援給付金:基準額:月額5450円
  • 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級6813円・2級5450円
  • 遺族年金生活者支援給付金:月額5450円

ただし、老齢年金生活者支援給付金については、上記の基準額をもとに保険料納付状況(※保険料納付済期間や免除期間)に応じて計算されます。実際に受け取る金額には個人差が出る点は留意が必要です。

支給要件を満たすと、月額で最大約5000円、1回の年金支給で最大約1万円、年額にすると最大約6万円が、年金に上乗せされることになります。

ただし、この「年金生活者支援給付金」を受け取るためには手続きが必要です。次で見ていきましょう。

5. 年金生活者支援給付金の受給には《申請手続きが必要》

年金生活者支援給付金の受給には、申請手続きが必要です。

対象となる人にはお知らせを兼ねた請求書が届きますが、これを提出しないと「1円も」受け取ることができません。

現在の年金状況により日本年金機構から届く書類は違います。ここでは「これから老齢年金を受給スタートする人」と「すでに年金を受給している人」の2パターンを解説します。

5.1 パターン1:これから老齢年金を受給スタートする人

これから年金を受給開始する人が、年金生活者支援給付金の支給対象となった場合は、老齢基礎年金の請求書に給付金請求書が同封されます。

給付金請求書に必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書と一緒に提出しましょう。

これから老齢年金を受給スタートする人の申請方法6/7

65歳の誕生日を迎え、老齢基礎年金を新規に請求する場合の申請方法

出所:日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求される方の請求手続きの流れ」

なお支給要件に該当するか確認できない場合には、上記の「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」とともに、所得情報等を確認するための所得状況届が送られてきます。

5.2 パターン2:すでに年金を受給している人

既に年金を受給中で、新たに年金生活者支援給付金の対象となった場合、 毎年9月1日以降に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。

請求書の指定部分に必要事項を記入し、切手を貼って返送しましょう。

すでに年金を受給している人の手続き方法7/7

すで年金を受け取っている人の手続き方法

出所:日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」

なお、年金を繰上げ受給中の人には上記とは異なる様式の書類が届きます。

いずれの場合も、申請手続きを一度おこなうと、2年度以降は基本的に手続き不要で受給が可能となります。支給要件を満たさなくなった場合には、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届きます。

6. まとめにかえて

今回は年金生活者支援給付金について詳しく解説してきました。受け取れる給付金の金額自体は高額とは言えないまでも、少しでも生活の足しになるのであれば受け取れるだけありがたいですよね。しかし、この給付金を受け取るにも必ず手続きが必要です。意外と、このような給付金の存在について知らなかったという人は少なくありません。

もらい忘れがないように、日本年金機構等からのお知らせについてはしっかり確認しておくことを常に意識しておきましょう。

年金だけで老後の生活が厳しそうだと感じた方は、今のうちから老後に備えて老後資金づくりを始めてみるのも良いでしょう。

今はNISAやiDeCoなど、少額からコツコツ積み立て投資をして将来に向けて資産を形成する制度が整っています。

まずは、自分に合った将来への備え方は何があるか?どういう方法で将来の準備をしたら良いか?などの情報収集から始めてみましょう。

参考資料