3. 国民健康保険料も高くなっている
介護保険料以外に私たちが納める社会保険料のひとつが、国民健康保険です。こちらも、給付額の増加により保険料が高くなっています。
厚生労働省によれば、令和4年度の歳出は、医療給付などの保険給付費用が8兆7582億円で、前年度の8兆6244億円から1338億円の増加となっています。
しかし、国民健康保険の加入者数はここ数年で大幅に減少しています。2021年度は2537万人でしたが、2022年度は2413万人に減っています。また、13年前の2009年と比べると1000万人以上減少しているのです。
ここ10年ほどで、1人あたりの給付額が高額化してきているといえます。
要因としては、被保険者が高齢化してきていると考えられるでしょう。厚生労働省の「国民健康保険調査」によれば、保険者数2377万6772人のうち、65〜69歳の人は400万7426人で全体の16.9%、70〜74歳の人は646万4760人で全体の27.2%を占めています。あわせて44.1%と被保険者のほぼ半数が高齢者なのです。
高齢になると体力や免疫低下などで、医療機関を受診する機会が増えるでしょう。医療費には医療給付が使われるため、医療を受ける人が増えるほど給付額は大きくなります。よって、給付額が増える分、徴収額も増えていくのです。
一方、健康的に生きていくには医療を受けられる環境が必要です。医療受診が必要な人に適切に給付が届く仕組みづくりが、求められています。
4. 社会保障の改革は課題が山積
高齢者世帯は今後も増えていく可能性が高く、介護保険料はさらに高負担になっていくと考えられます。介護保険料などの社会保険料は年金から天引きされるのが一般的ですが、今後保険料が上がれば、老後生活の収入がさらに減少してしまいます。
社会保険料の財政の厳しさと被保険者の負担の重さは、国内における大きな課題のひとつです。実質的な医療費の値上げともいわれた「高額療養費の自己負担限度額引き上げ」は、何度も結論が二転三転するなか、引き上げ凍結の方向性となってきています。
適切な財政運営をしつつ、保険料負担を下げられるような制度改革や施策の実施が求められます。社会保障の今後の情報に注視していきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「第6期計画期間及び平成37年度等における介護保険の第1号保険料について」
- 厚生労働省「第8期計画期間における介護保険の第1号保険料について」
- 厚生労働省「第9期計画期間における介護保険の第1号保険料について」
- 全国健康保険協会「協会けんぽの介護保険料率について」
- 新宿区「介護保険料の決まり方」
- 厚生労働省「令和4年度 介護保険事業状況報告」
- 総務省統計局「人口推計-2025年(令和7年)2月報-」
- 厚生労働省「介護報酬について」
- 厚生労働省「令和6年度報酬改定と賃上げについて」
- 北海道「介護保険適用除外施設について」
- 板橋区「介護保険料の軽減制度」
- 新宿区「保険料の減免について」
- 北海道後期高齢者医療広域連合「保険料の軽減はあるの?」
- 大阪市「高額な介護保険料について」
- 厚生労働省「令和4年度国民健康保険(市町村国保)の財政状況について」
石上 ユウキ