2. 60歳から繰上げ受給をしながら働くことも可能
公的年金の受給開始年齢は原則として65歳からですが、60歳以降も働きながら、国民年金や厚生年金を繰上げ受給することが可能です。
2.1 繰上げ受給とは
繰上げ受給とは、希望により国民年金と厚生年金を、60歳から65歳までの間に繰り上げて受給できる制度です。
ただし、1カ月繰り下げるごとに0.4%減額され、仮に5年間繰下げて60歳から受給開始する場合は、24%(0.4%×60カ月)の減額となります(※)。
なお、一度繰上げ受給を選択すると取消しはできず、減額率は生涯にわたり適用されます。
また、国民年金と厚生年金は同時に繰り上げる必要があり、別々に繰り上げることはできないことに注意しましょう。
※昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は0.5%で最大30%
2.2 「年金+月給」が50万円を超えると年金額が調整される
60歳以降に厚生年金に加入しながら年金を受給する場合、1カ月の厚生年金と給与の合計が50万円(令和6年度の支給停止調整額)を超えると、厚生年金の一部または全額が支給停止されます。
支給停止額は以下の計算式で求めます。
支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額※-50万円)×1/2
※毎月の給与(標準報酬月額)と1年間の賞与の合計額を12で割った金額
【支給停止にならない場合】
給与(賞与を含む)が28万円、厚生年金が11万円、国民年金が6万円の場合、合計金額は45万円になります。
45万円<50万円なので、年金は全額受給することが可能です。
【支給停止になる場合】
給与(賞与を含む)が47万円、厚生年金が15万円、国民年金が6万円の場合、合計金額は68万円になります。給与と厚生年金の合計額が62万円で、50万円よりも多くなるため厚生年金の一部が支給調整されます。
なお、国民年金は給与等に関わらず全額を受給することが可能です。
支給停止額=(47万円+15万円-50万円)×1/2=6万円
したがって、6万円が支給停止となるため、受給額は62万円(68万円-6万円)となります。
3. まとめにかえて
高年齢者雇用安定法が改正され、2025年4月からすべての企業で65歳までの雇用確保制度を設けることが義務付けられます。これにより、就業を希望する65歳までの方の雇用が確保可能になります。
年金を繰上げ受給しながら働くことも可能ですが、1カ月の年金額と給与の合計額が50万円を超えると、厚生年金の一部または全部が支給停止となります。年金受給額を減らさないためには、給与と年金額の合計額を常に確認しながら調整する必要があります。
参考資料
- 厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止~」
- 厚生労働省「経過措置期間は 2 0 2 5年3月 3 1日までです 4月1日以降は別の措置により、高年齢者雇用確保措置を講じる必要があります」
- 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 | e-Gov 法令検索(第9条)
- 厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
- 日本年金機構「働きながら年金を受給する方へ」
木内 菜穂子