4. 年金を増やすために私たちができる工夫
年金を増やす方法としては、公的年金の上乗せを狙うパターンと、公的年金とは別の年金をつくるパターンが考えられます。
公的年金の上乗せを狙う場合は、厚生年金保険への加入期間を長くしていく必要があるでしょう。厚生年金は国民年金と異なり、70歳まで加入できます。厚生年金保険への加入期間は受給額に影響するため、期間が長くなるほど受給額を増やせます。
ただし、65歳になり年金受給が開始する際に年金と給与の合計が一定額を超えると、年金額がカットされる「在職老齢年金」の対象となります。働き方を調整しながら加入を続ける必要があるでしょう。
公的年金とは別に年金をつくるのであれば、複数の手段が考えられます。
- iDeCo
- 企業年金
- 個人年金保険
とくにiDeCoは会社員や公務員でもはじめやすいため、資産形成には最適です。iDeCoは掛金がすべて所得控除の対象となったり、受け取り時も「退職所得控除」や「公的年金等控除」により一定額まで非課税になったりと、税制優遇が多い点が強みです。所得控除は掛金を拠出していれば毎年受けられるため、税額が減り、実質的な手取り給与の増加も期待できます。
ただし、退職所得控除は2026年度からルールが変わる見込みです。これまでは一度退職金を受け取り、5年後に別の退職金を受け取った場合、それぞれに退職所得控除が適用できました。しかし、改正後は10年経たないとそれぞれの退職金に控除を適用できなくなります。現行制度は5年経てば再度適用できるため、退職金とiDeCoの運用金の受け取り方を十分に検討しておく必要があるでしょう。
5. まとめ
月額15万円の年金からは、約2万円が税金や社会保険料として差し引かれます。とくに社会保険料の負担は税額よりも重たいケースが多く、今後さらに負担が増える可能性も否めません。
社会保険料は、所得額が低ければ軽減や減免などが認められる場合があります。しかし、月額15万円ほどの年金を受け取っている場合は、生活に困窮しているとはみなされず、軽減や減免減額は認められない場合があるでしょう。
iDeCoの受け取りで退職所得控除を活用したり、個人年金保険の保険料を支払って生命保険料控除を適用したりと、所得税や住民税を減らすための工夫に注力してみるとよいでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 国税庁「高齢者と税(年金と税)」
- 日本年金機構「年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税を特別徴収されるのはどのような人ですか。」
- 新宿区「住民税について」
- 新宿区「保険料の計算方法について」
- 新宿区「介護保険料の決まり方」
- 日本年金機構「は行 報酬比例部分」
- 財務省「令和7年度税制改正の大綱」
石上 ユウキ