厚生労働省が公表した実質賃金は3年連続でマイナスとなりました。賃上げの効果を十分に得られておらず、私たちの生活はなかなか上向きません。
とくに定年退職や老後生活が間近になってきた50歳代の世帯は、現状と今後の生活に不安を覚えている人もいるでしょう。十分な貯蓄がなければ、これからの老後生活は苦しいものになってしまいます。
50歳代の世帯は、現状でどれくらいの貯蓄があるのでしょうか。この記事では、実質賃金の推移と50歳代の貯蓄額について解説します。
1. 実質賃金の推移を名目賃金と比較
実質賃金とは、額面の給与から物価上昇率を差し引いたものです。労働者が購入できるモノやサービスの量を示す数値で、個人消費動向にも影響を与えています。
2024年度の実質賃金は▲0.2%でした。四半期ごとに分けた数値は、以下のとおりです。
- 2024年1〜3月:▲1.6%
- 2024年4〜6月:▲0.2%
- 2024年7〜9月:▲0.3%
- 2024年10〜12月:0.5%
プラスだったのは10〜12月期のみで、ほかの期はすべてマイナスとなっています。
一方、額面給与の金額を示す名目賃金は、安定してプラスの数値となっています。2024年度の名目賃金を、四半期ごとに見てみましょう。
- 2024年1〜3月:1.3%
- 2024年4〜6月:3.0%
- 2024年7〜9月:2.9%
- 2024年10〜12月:3.9%
名目賃金と実質賃金には、大きな差があるようです。
実質賃金がマイナスとなるのは3年連続です。過去の実質賃金、名目賃金の推移を見てみましょう。
実質賃金
- 2017年度:▲0.2%
- 2018年度:0.2%
- 2019年度:▲1.0%
- 2020年度:▲1.2%
- 2021年度:0.6%
- 2022年度:▲1.0%
- 2023年度:▲2.5%
- 2024年度:▲0.2%
名目賃金
- 2017年度:0.4%
- 2018年度:1.4%
- 2019年度:▲0.4%
- 2020年度:▲1.2%
- 2021年度:0.3%
- 2022年度:2.0%
- 2023年度:1.2%
- 2024年度:2.9%
実質賃金は過去8年度でプラスとなったのが2年度のみです。2018年度と2021年度を除き、マイナスの数値となっています。一方、名目賃金は2019年度と2020年度を除き、プラスの状況です。
実質賃金は、物価の上昇に賃金の伸びが追いつかない場合にマイナスとなります。昨年の春闘では5%超えの賃上げが実現し、額面の給与は確かに上昇しているようです。しかし、実質賃金はプラスに転じず、賃上げ以上に物価が上昇していることがわかります。結果的に、賃上げの恩恵を十分に得られない状態となっているのです。
次章では、50歳代の平均年収について解説します。