公的年金は、物価や経済の変化に応じて毎年見直されており、2025年度は1.9%の増額となりました。
とはいえ、その増額は物価上昇に追いついておらず、実質的には年金の価値が年々下がっている状態が続いています。
2025年8月22日には7月の消費者物価指数が公表されましたが、生鮮食品を除く総合指数は前年同月比3.1%上昇。
こうした状況下、年金を受け取りながらも働き続ける高齢者が増えてきています。
実際、総務省の「統計からみた我が国の高齢者」によれば、65〜69歳で52.0%、70〜74歳で34.0%の人が就業しており、高齢者の就業率は過去最高水準を記録しています。
これらの数字からも、「老後は年金だけで暮らせる」という考えが現実的ではなくなってきていることがわかります。
では実際に、「年金のみで生活している高齢者」は、どの程度いるのでしょうか。
本記事では、シニア世代の年金を取り巻く実態について詳しく紹介していきます。
1. 「年金だけで十分に生活できているシニア世帯」は43.4%
厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、100%年金だけで生活している人は「43.4%」となりました。
【公的年金・恩給を受給している高齢者世帯】
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80%~100%未満の世帯:16.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~60%未満の世帯:8.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
高齢者世帯の過半数は年金収入だけでは生活が成り立っておらず、およそ2世帯に1世帯が就労収入や貯蓄を取り崩して生活費を補っているとうかがえます。
加えて、厚生労働省の同調査によると、65歳以上の高齢者世帯のうち55.8%が「生活が苦しい」と感じていることが明らかになっています。
これらの数字から、公的年金のみでは十分な生活資金を確保できず、経済的に厳しい状況に置かれている高齢者が少なくないことがみてとれます。
では、現在のシニアが受け取っている年金額は、具体的にどの程度なのでしょうか。
次章では、国民年金および厚生年金の平均受給額について詳しく見ていきます。