会社員の場合、確定申告は経験したことのない人の方が多いかもしれません。
では、年金生活になると確定申告が必要になるのでしょうか。
【確定申告不要制度】があるため、原則では不要となるものの、一部で申告が必要な人もいます。
今年の確定申告の期限は3月17日となっています。
今回は、そもそも確定申告とはどういうものなのかも含め、会社を退職した後の老齢年金受給者は確定申告が必要か不要かを見ていきます。
1. そもそも確定申告って何?
確定申告とは、1年間(1月1日~12月31日)の所得について、「所得金額」と「所得に対する税額」を確定させる手続きを言います。
会社員であれば、年末調整で完結することが多いです。
一方で自営業者などは確定申告にて税額を決定し、納付を行うのです。
所得税及び復興特別所得税の確定申告期間は原則、翌年の2月16日から3月15日までとなり、令和6年度分の確定申告期間は「令和7年2月17日~令和7年3月17日」とされています。
確定申告が必要となる場合、この1カ月で所得税及び復興特別所得税の納付まで行う必要があります。
2. 老齢年金受給者は確定申告が必要なのか
年金生活に入ると、これまでの会社勤めとは違い、年末調整がありません。
老齢年金(国民年金・厚生年金)は「雑所得」という所得(※1)となり、所得税及び復興所得税の確定申告の対象となります(※2)。
ただし、「確定申告不要制度」の要件を満たす場合には、確定申告は不要です。
※1:所得の金額とは総収入金額から必要経費などを差し引いた金額です
※2:障害年金、遺族年金は非課税所得となり、所得には含まれません
確定申告不要制度について、もう少し詳しく見ていきましょう。
3. 確定申告不要制度をわかりやすく解説
以下2つの要件を満たす場合、確定申告は不要となります。これを、「確定申告不要制度」といいます。
- 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である
所得が公的年金等のみの方のうち、年金収入が「400万円」であれば、確定申告が必要となることがわかります。
公的年金以外にも所得がある場合、そちらが20万円を超えていれば、こちらも申告が必要です。
「公的年金等」に含まれる収入と、公的年金等に係る雑所得以外の主な所得の違いは以下のとおりです。
3.1 「公的年金等」に含まれる主な収入
- 老齢基礎年金
- 老齢厚生年金
- 老齢共済年金
- 企業年金
- 普通恩給
など
こちらは、400万円以上なら確定申告が必要になります。
3.2 公的年金等に係る雑所得以外の主な所得
公的年金等に係る雑所得以外の所得について、主な種類の内容と、所得金額の計算方法についても触れておきましょう。
3.3 ◆給与所得(例:給与・賞与・パート収入)
- 給与等の収入金額ー給与所得控除=給与所得
3.4 ◆公的年金等以外の雑所得(例:個人年金・原稿料)
- 総収入金額ー必要経費=公的年金等以外の雑所得
3.5 ◆配当所得(例:株式の配当金・投資信託の分配金)
- 収入金額ー株式などの元本取得に要した負債の利子
3.6 ◆一時所得(例:生命保険の満期返戻金)
- (総収入金額ー収入を得るために直接要した金額ー特別控除額【最高50万円】)×1/2
該当するかどうか分からない場合は、事前に税務署や専門家に相談することをお勧めします。
公的年金等の年間収入がよくわからないという場合は、1月に送付された「公的年金等の源泉徴収票」をチェックしましょう。
4. 「公的年金等の源泉徴収票」をチェックすればわかること
通帳等に記載された金額は、税金や社会保険料等が天引きされたあとの金額なので、収入額と一致しません。
公的年金等の正確な年間収入は、毎年1月上旬頃に届く「公的年金等の源泉徴収票」で確認できます。
令和6(2024)年分は、令和7(2025)年1月8日~順次送付されました。
「令和6年分 公的年金等の源泉徴収票」の見本にてわかるとおり、「(1)支払金額」には、各種税金や社会保険料が引かれる前の1年間の年金合計額が記載されています。
この「(1)支払金額」が400万円以下で、他に給与や配当金などで年間20万円以上の所得がない場合は、確定申告は不要であると判断できます。
5. 公的年金等の源泉徴収票はネットでも確認できる
実は、公的年金等の源泉徴収票は「マイナポータル」や「ねんきんネット」でも確認できます。
5.1 マイナポータル
- 令和1月6日までに電子送付希望を登録した方に「令和7年1月7日~令和7年1月10日」にかけてマイナポータルの「お知らせ」に電子送付
※令和7年1月7日以降に電子送付を希望する場合は、マイナポータルから「ねんきんネット」にログインして再交付申請を行ってください。
5.2 ねんきんネット
- 令和7年1月7日から確認可能
- PDFファイルで保存・印刷可能
ここまで紹介したいずれかの方法で、ご自身の情報を確認してみましょう。
では、年金収入400万円を超える人はどれほどいるのでしょうか。
月額にすると約33万円という年金を受け取ることになります。最後に、今のシニアが受給する年金の平均額や、高額受給者の存在について見ていきます。
6. 国民年金・厚生年金の平均年金月額はいくら?年収400万円以上は可能なのか
2024年12月に公表された、厚生労働省年金局は「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、最新の年金事情を見ていきます。
6.1 国民年金の平均年金月額
- 〈全体〉平均年金月額:5万7584円
- 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
- 〈女性〉平均年金月額:5万5777円
国民年金の場合は、満額でも月額で6万円台となります。
そもそも厚生年金という上乗せがない場合は、年金収入400万円を目指すことはできないでしょう。
6.2 厚生年金の平均年金月額
- 〈全体〉平均年金月額:14万6429円
- 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
- 〈女性〉平均年金月額:10万7200円
続いて厚生年金の場合、平均額は男女全体で14万6429円となりました。
月額33万円の半分にも満たないため、やはり年金収入400万円というのはなかなか厳しいといえそうです。
なお、厚生年金保険(第1号)の年金月額には国民年金の月額部分も含まれる点にご留意ください。
厚生年金の受給額ごとの人数は以下のとおりです。
6.3 厚生年金の受給額ごとの人数
- 1万円未満:4万4420人
- 1万円以上~2万円未満:1万4367人
- 2万円以上~3万円未満:5万231人
- 3万円以上~4万円未満:9万2746人
- 4万円以上~5万円未満:9万8464人
- 5万円以上~6万円未満:13万6190人
- 6万円以上~7万円未満:37万5940人
- 7万円以上~8万円未満:63万7624人
- 8万円以上~9万円未満:87万3828人
- 9万円以上~10万円未満:107万9767人
- 10万円以上~11万円未満:112万6181人
- 11万円以上~12万円未満:105万4333人
- 12万円以上~13万円未満:95万7855人
- 13万円以上~14万円未満:92万3629人
- 14万円以上~15万円未満:94万5907人
- 15万円以上~16万円未満:98万6257人
- 16万円以上~17万円未満:102万6399人
- 17万円以上~18万円未満:105万3851人
- 18万円以上~19万円未満:102万2699人
- 19万円以上~20万円未満:93万6884人
- 20万円以上~21万円未満:80万1770人
- 21万円以上~22万円未満:62万6732人
- 22万円以上~23万円未満:43万6137人
- 23万円以上~24万円未満:28万6572人
- 24万円以上~25万円未満:18万9132人
- 25万円以上~26万円未満:11万9942人
- 26万円以上~27万円未満:7万1648人
- 27万円以上~28万円未満:4万268人
- 28万円以上~29万円未満:2万1012人
- 29万円以上~30万円未満:9652人
- 30万円以上~:1万4292人
月額30万円以上の人は1万4292人。割合にして0.09%しか該当しないことから、年金収入しかない人のうち「確定申告不要制度」に該当する人は、かなり少ないことがわかりますね。
7. まとめにかえて
今回は、老齢年金受給者の確定申告についてみてきました。原則確定申告は必要ですが、不要な場合も条件によってはあります。
もし確定申告が必要な場合、期限は3月17日までとなっています。早めの準備を心掛けましょう。
また、所得税の還付を受ける人の場合は、【確定申告不要制度】の該当に関わらず申告が必要です。
この場合は3月17日を過ぎても行えますが、忘れないうちに手続きを行いましょう。
参考資料
- 国税庁「令和6年分確定申告特集」
- 公益財団法人生命保険文化センター「公的年金の税金(所得税)はどうやって計算される?」
- 日本年金機構「障害年金や遺族年金を受けている人にも公的年金等の源泉徴収票は送付されるのでしょうか。」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
渡邉 珠紀