有機EL発光材料のKyuluxがLG、サムスンと開発契約を締結

19年に高性能青色材料を商用化へ

Kyuluxの黄色発光有機ELパネル。超蛍光技術を用いた左半分は、蛍光材料だけの右半分より圧倒的に明るい

 有機EL材料ベンチャーの㈱Kyulux(キューラックス)は、韓国のLGディスプレー(LGD)およびサムスンディスプレー(SDC)と、青色TADF(熱活性化遅延蛍光)材料およびハイパーフルオレッセンス技術の共同開発契約を結んだと発表した。LGDとは2018年1月から共同開発を開始しており、このほどSDCともディープブルー(深い青色)を中心に開発契約を締結した。

 TADFは、蛍光発光材料、燐光発光材料に次ぐ「第3世代の有機EL発光材料」と呼ばれており、高価なレアメタルを用いることなく発光効率100%を実現できるとして期待を集めている。もとは九州大学の安達千波矢教授が開発した材料で、Kyuluxは九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA)から開発成果の独占実施権を得て実用化を進めている。

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 一方、ハイパーフルオレッセンスは「超蛍光」と呼ばれる第4世代の材料。TADFを発光材料として用いずに、既存の蛍光発光材料のアシストドーパント(添加剤)として活用し、すでに優れた寿命や発光波長を実現している既存の蛍光発光材料の性能を飛躍的に高める技術だ。

超蛍光でRGB3原色が揃う?

 Kyuluxは、7月に福岡市で開催された国際学会「第3回 国際TADFワークショップ」にて、ハイパーフルオレッセンスで世界最高性能の青色発光材料を開発したと発表。実用的な輝度レベルで20%以上の高い外部量子効率(EQE)を維持しながら、発光寿命を延ばすことに成功した。

 同社の青色発光材料は最大26%のEQEを達成し、特に明るさ1000cd/㎡でEQE22%を実現することができる。発光波長はピーク値で470nm。材料の寿命はLT95(750cd/㎡)で100時間。ちなみにLT95とは、輝度750cd/㎡で100時間使用後に輝度が5%低下することを意味する。

 17年末までは寿命が10時間にも満たなかったが、ここ数カ月で急激に改善し、18年に入ってから6カ月余りでこの性能を実現した。「ホスト材料など周辺材料の改善が進めば、さらに発光特性の改善が早まる」(安達淳治CEO)と説明していた。

 Kyuluxは、ハイパーフルオレッセンス技術を用いた赤色、緑色、黄色で寿命1000時間以上(LT95)の発光材料をすでに開発済み。LGD、SDCとの契約に際し、安達CEOは「世界で支配的な地位にある有機ELディスプレーメーカーと緊密に協力し、青色TADFおよびハイパーフルオレッセンスの開発を加速したい。当社は19年半ばに世界初の商業的に実現可能なハイパーフルオレッセンスを青色だけでなく、赤色、緑色でも提供できると確信している」と述べている。

ライバルの独CYNORAは商業化期限に間に合わず

 TADF材料に関しては、ドイツの有機EL発光材料ベンチャーであるサイノラ(CYNORA)も積極的な開発を進めている。同社は03年にアーヘン工科大学からのスピンアウトで設立され、有機EL材料の開発をメーンに事業を展開してきた。

 16年5月に、過去6カ月間で高効率青色発光材料の開発で大きな進歩を遂げたと発表。100cd/㎡時の外部量子効率が16.3%に達するディープブルー発光材料を開発し、15年10月時点で3%だった効率が6カ月で5倍に改善したと説明した。また、15年10月時点で数分レベルだったスカイブルー発光材料の寿命を400時間以上(500cd/㎡の輝度半減時間)に延長することにも成功した。

 16年10月には、単一の青色発光システムで高効率と長寿命を両立し、この材料が実デバイスで外部量子効率14%、寿命420時間(LT80、500cd/㎡時)を達成したことを明らかにした。これに伴い、青色TADF発光が有機ELディスプレーの仕様に到達したとして、17年末に商業化することを表明した。

 さらに、17年5月には、デバイスレベルで外部量子効率15%(1000cd/㎡)、発光ピーク波長470nm未満、LT97で90時間超(700cd/㎡)のTADF青色発光材料を開発したことを公表。これに際し、製品開発の仕上げとして発光ピークを460nmにすることに傾注すると述べ、計画どおり17年末までに高効率青色発光材料を商業化し、18年までに緑色発光材料、19年までに赤色発光材料を実現することも表明した。

 17年9月には、シリーズBとして韓国のサムスンベンチャーズとLGDから総額2500万ユーロを調達。商業化が近いことを匂わせていたが、現在までのところ商業化に関する公式アナウンスはしていない。

 TADFとハイパーフルオレッセンスは発光メカニズムが異なるため、KyuluxとCYNORAを一概に比較することは難しい。だが、ある有機EL材料技術者は「単独の青色TADFの開発よりも、寿命の長い蛍光発光材料を利用する超蛍光のほうがディープブルーの実現に近い」と語る。KyuluxとLGD、SDCの共同開発契約は、それを如実に物語る結果と言えるのだろう。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏

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津村 明宏(電子デバイス産業新聞)

1995年3月 関西大学 経済学部卒。1999年3月 ㈱産業タイムズ社に入社。
電子デバイス業界の専門紙である電子デバイス産業新聞(旧・半導体産業新聞)の記者として、2007年より副編集長、2009年12月より編集長