収入源が公的年金のみの方でも、一定金額以上の収入を得ている場合や、各種控除を受ける場合などは確定申告を行う必要があります。
とはいえ、年金受給者には「確定申告不要制度」が設けられており、基本的には申告する必要がありません。
では、老齢年金の受給者が確定申告を行う必要があるのはどのようなケースなのでしょうか。
今回は、確定申告不要制度の概要や、年金受給者でも申告が必要となるケースを詳しく解説します。
1月中旬頃に送付された「令和6年分公的年金等の源泉徴収票」を確認し、必要に応じて確定申告の準備を始めていきましょう。
1. 老齢年金の受給者は確定申告が必要?
通常、公的年金等の収入は「雑所得」として課税対象となっており、一定金額以上の収入を得ている場合は確定申告を行って税金の過不足を精算する必要があります。
しかし、年金受給者の確定申告手続きに伴う負担を減らすため、公的年金等に係る「確定申告不要制度」が設けられています。
確定申告不要制度の対象になるのは、以下の2つの条件を満たす場合です。
- 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下かつその公的年金等の全部が源泉徴収の対象
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
なお「公的年金等」には、国民年金や厚生年金に加え、共済組合から支給を受ける老齢年金や恩給(普通恩給)などが含まれます。
「公的年金等に係る雑所得以外の所得」は、生命保険や共済などの契約に基づいて支給される個人年金、給与所得、生命保険の満期返戻金などが該当します。
1.1 確定申告の要否は「公的年金等の源泉徴収票」で確認
2024年分に支払われた年金額や源泉徴収された所得税額等は、日本年金機構から送付される「令和6年分公的年金等の源泉徴収票」にて確認できます。
公的年金だけで400万円以上を受け取る方はごく少数なので、他に収入がなければ確定申告不要制度の対象となるケースが大半でしょう。
次項にて、公的年金の平均月額と受給額ごとの受給者数を見ていきます。
2. 【厚生年金・国民年金】平均月額と受給額ごとの受給者数
厚生年金と国民年金の平均月額は以下のとおりです。
2.1 〈全体〉
- 厚生年金:14万6429円
- 国民年金:5万7584円
〈男性〉
- 厚生年金:16万6606円
- 国民年金:5万9965円
〈女性〉
- 厚生年金:10万7200円
- 国民年金:5万5777円
なお、厚生年金と国民年金の受給額には個人差があります。特に、現役時代の収入と加入期間に左右される厚生年金の受給額には差が出やすいので、受給額ごとの受給者数も確認しておきましょう。
2.2 厚生年金・受給額ごとの受給者数
- 1万円未満:4万4420人
- 1万円以上~2万円未満:1万4367人
- 2万円以上~3万円未満:5万231人
- 3万円以上~4万円未満:9万2746人
- 4万円以上~5万円未満:9万8464人
- 5万円以上~6万円未満:13万6190人
- 6万円以上~7万円未満:37万5940人
- 7万円以上~8万円未満:63万7624人
- 8万円以上~9万円未満:87万3828人
- 9万円以上~10万円未満:107万9767人
- 10万円以上~11万円未満:112万6181人
- 11万円以上~12万円未満:105万4333人
- 12万円以上~13万円未満:95万7855人
- 13万円以上~14万円未満:92万3629人
- 14万円以上~15万円未満:94万5907人
- 15万円以上~16万円未満:98万6257人
- 16万円以上~17万円未満:102万6399人
- 17万円以上~18万円未満:105万3851人
- 18万円以上~19万円未満:102万2699人
- 19万円以上~20万円未満:93万6884人
- 20万円以上~21万円未満:80万1770人
- 21万円以上~22万円未満:62万6732人
- 22万円以上~23万円未満:43万6137人
- 23万円以上~24万円未満:28万6572人
- 24万円以上~25万円未満:18万9132人
- 25万円以上~26万円未満:11万9942人
- 26万円以上~27万円未満:7万1648人
- 27万円以上~28万円未満:4万268人
- 28万円以上~29万円未満:2万1012人
- 29万円以上~30万円未満:9652人
- 30万円以上~:1万4292人
※国民年金部分を含む
厚生年金のボリュームゾーンは10~11万円前後および17~18万円前後となっています。
続いて、国民年金における受給額ごとの受給者数も見てみましょう。
2.3 国民年金・受給額ごとの受給者数
- 1万円未満:5万8811人
- 1万円以上~2万円未満:24万5852人
- 2万円以上~3万円未満:78万8047人
- 3万円以上~4万円未満:236万5373人
- 4万円以上~5万円未満:431万5062人
- 5万円以上~6万円未満:743万2768人
- 6万円以上~7万円未満:1597万6775人
- 7万円以上~:227万3098人
国民年金のボリュームゾーンは6~7万円未満となっています。
ご覧の通り、国民年金を含めて月30万円以上(年間360万円以上)を受け取っている方は1万4292人しかおりません。
そのため、他に収入がない場合、多くの方が「確定申告不要制度」の対象となります。
ただし、確定申告不要制度の対象者でも、申告が必要なケースもあるため、次項にて確認しましょう。
3. 確定申告不要制度の対象者でも申告が必要なケース
確定申告不要制度の対象者でも、次のような場合は申告が必要です。
3.1 所得税の還付を受ける場合
公的年金等から所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されている方で、以下に当てはまる場合は所得税の還付を受けられる可能性があります。
住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合
住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合、建物や所得などに関する諸条件を満たしていれば住宅ローン控除を受けられます。住宅ローン控除を受けるには確定申告を行う必要があり、会社員などであれば2年目以降は年末調整にて控除を受けられます。
一定額以上の医療費を支払った場合
1年間に支払った医療費が一定額を超える場合、医療費控除を受けられます。具体的には「1年間に支払った医療費の合計額」から「保険金などで補てんされる金額」を差し引いた金額が10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額の5%)を超える場合に控除を受けられます。
災害や盗難にあった場合
災害または盗難もしくは横領によって損害を受けた場合、雑損控除を受けられます。雑損控除の金額は、以下の2つのうち多いほうの金額が適用されます。
- (損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
- (災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円
3.2 住民税の申告が必要な場合
所得税の確定申告が不要でも、以下に該当する場合は住民税の申告が必要な場合があります。
- 公的年金などに係る雑所得のみがある方で、生命保険料控除や損害保険料控除、医療費控除などを受ける場合
- 公的年金などに係る雑所得以外の所得がある場合
3.3 その他の申告が必要なケース
その他にも、年の途中で退職して年末調整を受けていない場合や、6つ以上の自治体にふるさと納税をしている方(もしくはワンストップ特例の申請をしていない方)も確定申告が必要となります。
4. まとめにかえて
今回解説したように、公的年金のみを収入源としている方の多くは確定申告を行う必要がありません。
しかし、他に収入がある場合や各種控除を受ける場合など、人によっては確定申告が必要となるケースがあります。
確定申告には手間がかかりますが、所得税の還付や控除を受けることで税負担を抑えられるため、必要に応じてきちんと申告しましょう。
参考資料
- 国税庁「年金受給者の皆様へ」
- 日本年金機構「令和6年分 公的年金等の源泉徴収票」
- 政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 国税庁「No.1210 マイホームの取得等と所得税の税額控除」)
- 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」)
- 国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」)
加藤 聖人