2月14日は、2025年に入って初めての公的年金支給日でした。この日、月額30万円の厚生年金を受け取った人がいます。
将来、自分が受け取れる年金額に不安を抱えている方も多いでしょう。また、物価や光熱費の値上がりにより日々の生活に余裕がなく、老後資金の準備を後回しにしている方もいるのではないでしょうか。
そんな中、「年金を月額30万円受給」と聞くと羨ましく思えるかもしれません。では、実際に年金を高額受給している人はどれくらいの割合なのでしょうか。
また、現役時代にどれくらいの収入があれば、厚生年金を月額30万円も受給できるのでしょうか。
今回は、厚生年金の受給額平均や、老後に向けて今からできる対策について一緒に考えていきましょう。
1. 日本の公的年金は「厚生年金と国民年金」の2階建て構造
日本の公的年金制度は「2階建て」と言われています。
これは、基本となる「国民年金(基礎年金)」と、上乗せ部分の「厚生年金」の2つの年金制度で成り立っているためです。
また、働き方や立場によって「国民年金だけに加入する人」と「国民年金と厚生年金の両方に加入する人」に分かれます。
次に、「国民年金」と「厚生年金」それぞれの基本的な部分を見ていきます。
1.1 【1階部分】国民年金の基本をおさらい
1階部分にあたる国民年金の加入対象は、基本的に日本に住む20歳から60歳未満の全ての人です。
職業や収入の有無に関わらず、60歳に達するまでの40年間(480ヶ月)にわたって国民年金保険料を支払うことが求められます。
ただし、第2号被保険者は厚生年金保険料を納める必要があり、第3号被保険者は保険料の支払い義務がありません。
そのため、国民年金保険料を単独で支払うのは自営業などの第1号被保険者に限られます。
もし40年間、保険料を納め続けた場合、老後には満額の国民年金を受け取ることができます。
1.2 【2階部分】厚生年金の基本をおさらい
第2号被保険者は、2階部分にあたる厚生年金にも加入しています。
そのため、老後に受け取る年金は「国民年金(老齢基礎年金)」と「厚生年金」の2つとなります。
厚生年金の保険料は、給与や賞与などの報酬額に基づいて決まるため、個人ごとに金額に差が生じます。
このように、国民年金と厚生年金はそれぞれ年金保険料や年金額を決定する仕組みが異なるため、国民年金だけを受け取る場合と、厚生年金が上乗せされる場合では年金の水準が異なります。
国民年金のみ加入している場合、年金収入が「月額30万円以上」になることは不可能です。
また、厚生年金加入者でも、老後に受け取る年金額は現役時代の収入に応じて一人ひとり異なります。
次章では、現在のシニア世代が受け取る厚生年金の月額について見ていきましょう。
2. 「厚生年金」の平均月額はいくら?
厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均年金月額は男女全体で14万6429円でした。
※厚生年金の年金月額には国民年金の月額部分が含まれています。
※本記事では、民間企業の会社員などが加入する「厚生年金保険(第1号)」の年金月額を紹介します。
- 〈全体〉平均年金月額:14万6429円
- 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
- 〈女性〉平均年金月額:10万7200円
現在、男性の平均月額は16万円台、女性の平均月額は10万円台で、その差は約6万円と大きな開きがあります。
現在のシニア世代が働いていた時期は、夫婦共にフルタイムで働く家庭は一般的ではなく、結婚や出産をきっかけに女性が厚生年金を脱退することも多かった時代でした。
このため、厚生年金における男女間の差は、若い頃の働き方や収入格差が影響していると考えられます。
また、厚生年金を受け取る男性同士、女性同士でも個人差が大きい点にも注意が必要です。
では、男女全体の平均月額の約2倍となる「30万円以上」の年金を受け取れる人は、どれほどいるのでしょうか。
3. 年金「月額30万円以上」を受給する人はどのくらいいる?
「月額30万円以上」の年金を受け取ることができる人は、どれくらいの割合になるのでしょうか。
引き続き、厚生労働省年金局の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、厚生年金の年金月額ごとの受給者数について確認していきます。
※先述の通り、厚生年金の年金額には国民年金が含まれています。
3.1 「厚生年金」の月額階級別受給権者数をチェック
3.2 厚生年金の月額階級別受給権者数(男女全体)
- 1万円未満:4万4420人
- 1万円以上~2万円未満:1万4367人
- 2万円以上~3万円未満:5万231人
- 3万円以上~4万円未満:9万2746人
- 4万円以上~5万円未満:9万8464人
- 5万円以上~6万円未満:13万6190人
- 6万円以上~7万円未満:37万5940人
- 7万円以上~8万円未満:63万7624人
- 8万円以上~9万円未満:87万3828人
- 9万円以上~10万円未満:107万9767人
- 10万円以上~11万円未満:112万6181人
- 11万円以上~12万円未満:105万4333人
- 12万円以上~13万円未満:95万7855人
- 13万円以上~14万円未満:92万3629人
- 14万円以上~15万円未満:94万5907人
- 15万円以上~16万円未満:98万6257人
- 16万円以上~17万円未満:102万6399人
- 17万円以上~18万円未満:105万3851人
- 18万円以上~19万円未満:102万2699人
- 19万円以上~20万円未満:93万6884人
- 20万円以上~21万円未満:80万1770人
- 21万円以上~22万円未満:62万6732人
- 22万円以上~23万円未満:43万6137人
- 23万円以上~24万円未満:28万6572人
- 24万円以上~25万円未満:18万9132人
- 25万円以上~26万円未満:11万9942人
- 26万円以上~27万円未満:7万1648人
- 27万円以上~28万円未満:4万268人
- 28万円以上~29万円未満:2万1012人
- 29万円以上~30万円未満:9652人
- 30万円以上~:1万4292人
上表より、月額30万円以上の年金を受け取っている人は1万4292人で、その割合は0.09%であることがわかります。
この層は、まさに高額年金受給者と言えるでしょう。
では、この月額30万円の年金を受け取るためには、どれほどの年収が必要なのでしょうか。
次に、月額30万円の年金を受け取るための「現役時代の平均年収」を計算してみます。
4. 年金「月額30万円以上」受給できる人の現役時の平均年収はいくら?
厚生年金の受給額の計算方法は、2003年3月以前と2003年4月以降で異なります。
2003年4月からは、年金保険料が毎月の給与に加えて「賞与」からも天引きされるようになりました。
この変更により、年金額の計算基準が変わり、賞与を含めた収入が年金額に影響を与えるようになっています。
- 2003年3月以前の加入期間:平均標準報酬月額×(7.125/1000)×2003年3月以前の加入月数
- 2003年4月以降の加入期間:平均標準報酬額×(5.481/1000)×2003年4月以降の加入月数
今回は「2003年4月以降に厚生年金に40年間加入」かつ「2024年度は国民年金を満額の6万8000円(月額)受給できる」ケースで、年金を月額30万円以上受け取れる人の年収目安を試算してみましょう。
まずは、年金額(年額)から、満額の国民年金部分(同じく年額)を差し引きます。
- 360万円(30万円×12カ月)- 81万6000円(6万8000円×12カ月) = 278万4000円(厚生年金部分の年額)
次に、厚生年金が278万4000円となる「平均標準報酬月額(現役時の月の収入)」を計算していきましょう。
- 平均標準報酬額×5.481/1000×480カ月(40年間)=278万4000円
- 平均標準報酬額=約105万8000円
平均標準報酬月額は約105万8000円で、これに基づく年間報酬額は約1269万6000円となります。
このため、老後に年金月額30万円以上を受け取るためには、理論的には「40年間の平均年収が約1269万6000円を超える必要がある」と言えます。
4.1 あとから年収を上げれば「年金額のリカバリー」はできるのか?
若い頃の年収が低かったとしても、その後のキャリアアップで収入が増やすことは可能です。
その結果、40年間の平均年収が約1270万円を超えることも考えられます。
とはいえ、後半に収入を増やしても、老後に月額30万円以上の年金を受け取るのは難しいかもしれません。
その理由は、厚生年金の年金額計算において、標準報酬月額の上限が65万円、標準賞与額の上限が150万円と定められているためです。
これ以上の収入分は年金額に反映されません。
つまり、収入には上限があり、それ以上の金額は年金に影響しないのです。
したがって、老後に月額30万円以上の年金を受け取るためには、キャリアの早い段階から高い収入を維持することが必要であり、こうした年金額を得られる人はごく一部の高収入層に限られていると言えるでしょう。
5. 老後に向けて、今からできる対策
今回は、厚生年金を「月額30万円以上」受給する人の割合や、現役時代の平均収入などを見てきました。
将来のためにキャリアアップして収入を増やしていくことも大切ですが、それだけでは限界があるかもしれません。
自分が将来どれくらいの年金を受け取れるか、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認したうえで、不足分は今から計画的に貯蓄していく必要があります。
銀行預金ではなかなかお金が増えない現在、NISAやiDecoといった制度を活用して資産運用に取り組むのも方法のひとつです。
ただし、運用には元本割れのリスクもあります。メリットとデメリットを考慮したうえで、自分に合った資産形成の方法を選ぶことが大切です。
【編集部よりご参考】
第1号被保険者や第3号被保険者は、将来国民年金のみの受給となります。
参考までに、国民年金(老齢基礎年金)の受給額ごと人数もご紹介します。
国民年金受給額ごとの人数
- 1万円未満:6万5660人
- 1万円以上~2万円未満:27万4330人
- 2万円以上~3万円未満:88万1065人
- 3万円以上~4万円未満:266万1520人
- 4万円以上~5万円未満:465万5774人
- 5万円以上~6万円未満:824万6178人
- 6万円以上~7万円未満:1484万7491人
- 7万円以上~:178万3609人


