3. 在職老齢年金は見直しの予定
在職老齢年金は、国の社会保障審議会の年金部会で見直しが検討されている最中です。部会で挙げられた当初の案は以下の3つでした。
- 制度の撤廃
- 基準額を71万円まで引き上げ
- 基準額を62万円まで引き上げ
このうち、制度を撤廃すると年金給付額が4500億円増加します。しかし国はこのケースの場合「現在年金を受給する人たちの金額は増えるが、将来世代の給付水準が低くなる」とし、段階的な見直しに移ろうとしているようです。
しかし、制度撤廃により多くのシニアが働いて賃金を受け取ったり厚生年金保険料を納めたりすることで、結果的に年金財政へ好影響を与える可能性もあります。
こうした意見は実際に部会で出ていることから、いずれ制度が撤廃される可能性も十分あるといえるでしょう。
「このシミュレーションは、例えば50万人の人に対して在老停止がなくなったことで支払う年金が増えるという影響です。ただ、その結果、この人たちがより高い賃金で働いて、保険料を払って、経済成長に寄与して、年金財政にも貢献するという動態的なループは入っていないという点では、資料にも見込んでいないと書いてありますので、4500億円というのはそういう効果が入っていない意味ではやや過大推計かなと思います。」
引用:厚生労働省「第21回社会保障審議会年金部会(議事録)」
正式な基準額の引き上げ時期や撤廃時期は、現時点で明らかにされていません。今後の動向を注視する必要がありそうです。
4. まとめ
在職老齢年金制度は、年金がカットされることから働き控えや就業時間の調整などの要因となります。働くシニアにとっては「50万円の壁」ともいえる存在でしょう。
働く意欲のあるシニア世代が年金カットを気にせず働けるよう、適切な制度改正が望まれています。
参考資料
- 日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
- 厚生労働省「在職老齢年金制度について」
- 内閣府「令和6年版 高齢社会白書(概要)」
- 厚生労働省「第21回社会保障審議会年金部会(議事録)」
石上 ユウキ