2. 在職老齢年金の課題
在職老齢年金は、2000年の改正時に、現役世代の負担が過度に重くなるのを避けるため「60歳代後半で報酬を受け取っている人は年金制度を支える側にまわってもらう」という考え方のもとつくられた制度です。
しかし、当時から25年が経った現在、在職老齢制度は「時代に沿った制度ではない」という大きな課題を抱えています。
内閣府が公表している「令和6年版高齢社会白書」によれば、65歳以上の就業者数や就業率は、ここ数年で増加し続けています。
2013年の65歳以上の就業者人口は600万人程度でした。しかし、2023年には900万人超と約300万以上増加しています。
とくに70代以上の人の就業が多くなっているのが特徴的です。70〜74歳は2013年が175万人であったのに対し、2023年は303万人まで増えています。
また、75歳以上は2013年時点で128万人ですが、2023年時点では228万人に増えています。
働くシニアが増えている分、年金カットの憂き目に合う人は今後も増え続けるでしょう。
また、在職老齢年金制度が適用されるのは、年金と給与を受け取っている人に限定されているのも問題点です。雇用されて働く人は年金カットの可能性がありますが、以下のような収入を得ている人は、年金をカットされません。
- 業務委託や請負契約などで事業をして収入を得た場合
- 不動産収入を得た場合
- 株式の売却益を得た場合
結果的に、雇用されて働く人だけが損を被るような制度となってしまっているのです。
そのため、国は現在在職老齢年金の見直しを検討しています。これについて、次章で解説します。