2025年1月9日、厚生労働省は2024年11月の毎月勤労統計調査を発表しました。米や野菜などの食品の価格上昇などの影響で、実質賃金は4カ月連続のマイナスという結果になっています。物価高騰の波が収まらない中、シニア世代の年金生活事情はどのようになっているのでしょうか。
本記事では、老後の収入の柱となる公的年金の受給額や、「平均の2倍である約29万円」を受給する人の割合について確認していきます。
どれほどの年収があれば、高額年金受給者を目指せるのでしょうか。
記事の後半では、ゆとりある老後生活を送るために重要な資産形成の考え方ついても触れていきます。
1. 日本の公的年金制度を振り返る「厚生年金と国民年金」とは
高額年金受給者を見ていく前に、まずは日本の公的年金制度を整理しましょう。
「厚生年金と国民年金」があり、このうち厚生年金に加入していない場合は高額受給を目指すことが困難だからです。
1.1 国民年金(老齢基礎年金)とは?
1階部分にあたる国民年金(基礎年金)の加入対象は、原則として日本に住む20歳から60歳未満の全ての人です。
このうち第1号被保険者である自営業者や無職の方などは、職業や収入の有無に関わらず、60歳になるまでの40年間(480ヶ月)国民年金保険料を納付します。
国民年金の保険料は年度ごとに見直しが行われており、2024年度の月額は1万6980円でした。
なお、「第2号被保険者」は厚生年金保険料(後述)を納めます。また、第2号被保険者に扶養される配偶者を「第3号被保険者」といい、国民年金保険料を支払う必要がありません。
よって、国民年金保険料を単独で支払う必要があるのは第1号被保険者のみと整理できます。
全期間(480カ月)の年金保険料を納めた場合、老後に満額の国民年金を受給できるというしくみです。ちなみに、2024年度の満額は6万8000円でした。
もうすぐ2025年度の受給額が公表されるため、注目されています。
1.2 厚生年金(老齢厚生年金)とは
国民年金の第2号被保険者は、国民年金に上乗せして厚生年金に加入します。この場合、老後は国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金を受け取れることになります(要件を満たした場合)。
厚生年金の保険料は、国民年金のように一律ではありません。給与や賞与などの報酬に応じて決まるため、個人差が出やすいのが特徴です。
つまり、高額受給者になれるカギは「厚生年金への加入期間」と「高年収」にあると整理できます。
高額受給者の実態について、最新の調査資料から見ていきましょう。
2. 【最新データ】厚生年金「月額29万円以上」受け取る人たち
厚生労働省年金局は2024年12月、最新データである「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を公表しました。
こちらによると、2023年度の厚生年金の平均受給額は14万6429円です。
その約倍となる「月額29万円以上」も受け取る人はどれほどいるのでしょうか。
2.1 厚生年金の「月額階級別受給権者数」一覧
- 1万円未満:4万4420人
- 1万円以上~2万円未満:1万4367人
- 2万円以上~3万円未満:5万231人
- 3万円以上~4万円未満:9万2746人
- 4万円以上~5万円未満:9万8464人
- 5万円以上~6万円未満:13万6190人
- 6万円以上~7万円未満:37万5940人
- 7万円以上~8万円未満:63万7624人
- 8万円以上~9万円未満:87万3828人
- 9万円以上~10万円未満:107万9767人
- 10万円以上~11万円未満:112万6181人
- 11万円以上~12万円未満:105万4333人
- 12万円以上~13万円未満:95万7855人
- 13万円以上~14万円未満:92万3629人
- 14万円以上~15万円未満:94万5907人
- 15万円以上~16万円未満:98万6257人
- 16万円以上~17万円未満:102万6399人
- 17万円以上~18万円未満:105万3851人
- 18万円以上~19万円未満:102万2699人
- 19万円以上~20万円未満:93万6884人
- 20万円以上~21万円未満:80万1770人
- 21万円以上~22万円未満:62万6732人
- 22万円以上~23万円未満:43万6137人
- 23万円以上~24万円未満:28万6572人
- 24万円以上~25万円未満:18万9132人
- 25万円以上~26万円未満:11万9942人
- 26万円以上~27万円未満:7万1648人
- 27万円以上~28万円未満:4万268人
- 28万円以上~29万円未満:2万1012人
- 29万円以上~30万円未満:9652人
- 30万円以上~:1万4292
※厚生年金の年金額には国民年金が含まれています。
年金「29万円以上~30万円未満」は9652人、30万円以上は1万4292人でした。
合計は2万3944人で、割合にすると0.15%のみです。
では、どれほどの年収があれば高額受給者を目指せるのでしょうか。次章で試算してみます。
3. 年金の高額受給者は確かにいるが…現役時代の平均年収を試算
わかりやすいよう、ここでは「厚生年金(国民年金を含む)」を月額30万円以上受給できる人の試算として、下記の条件に限定してみます。
というのも、厚生年金受給額を決める計算式は「2003年3月以前」と「2003年4月以降」で変わっており、加入年数でも左右されるからです。
- 2003年4月以降に厚生年金に加入した
- 40年間加入した
- 国民年金は2024年度の満額である81万6000円を受け取る
年金を「月額30万円」、「年間360万円」を受給するためには、国民年金81万6000円を差し引いて、厚生年金部分として282万円受給することになります。
- 平均標準報酬額×5.481/1000×480カ月(40年間)=278万4000円
上記より、平均標準報酬額は約105万8000円とわかります。
平均標準報酬額は約105万8000円となるため、これを年収換算すると約1269万円となります。
40年間の平均年収が「約1269万円以上」に達すれば、理論上「月額30万円以上」の年金を受給できる計算になります。
40年間の平均ではありますが、厚生年金の計算に使われる等級には上限が設けられており、後から挽回することは難しいです。
つまり、初任給の時点で年収「約1269万円以上」を目指す必要があるため、現実的にはかなり厳しいと言えるでしょう。
実際の資料では「高額受給者」が確かにいるとわかったものの、純粋に公的年金だけで月30万円以上を目指すのは困難です。
繰下げ受給や加給年金によって上乗せする人もいますが、私的年金なども検討する必要があるでしょう。
4. 資産形成プランを考えていきましょう
ここまで公的年金の仕組みと、実際の受給額や受給額の設定に関しての周辺知識を整理してきました。
実際、老後に受け取れる年金額には個人差があります。「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で正確な金額は把握しておきましょう。
今後も物価上昇が続いていった場合、公的年金のみでゆとりある生活を送っていくことは難しくなることも予想されます。
老後まで預貯金で少しずつ貯蓄額を増やしていくことも大切ですが、超低金利時代の現在、効率的な方法とは言えないかもしれません。
2024年に拡充されたNISA制度の活用を検討しながら積立していくことも有効です。まずは情報収集からスタートしてみませんか。
資産運用のリスクやメリットを理解し、最適な資産づくりのスタイルを探していきましょう。
5. 【ご参考】年金に関する疑問や不安を解消!よくある質問を解説
年金に関する疑問や不安を解消!よくある質問を解説4/4
出所:厚生労働省、日本年金機構などの各種資料をもとにLIMO編集部作成
日本の公的年金制度は複雑で、多くの人がさまざまな疑問を抱えていることでしょう。ここでは、年金に関するよくある質問を取り上げ、その解答を解説します。
5.1 年金の主な種類と仕組みは?
日本の公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造になっています。
国民年金は日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入する基礎年金で、厚生年金は会社員や公務員が加入するものです。
国民年金は一定の保険料を納付し、将来の年金額が決まるのに対し、厚生年金は収入に応じた保険料を支払うため、将来の受給額にも差が出ます。
5.2 「繰下げ受給」とはどんな制度?
年金の受給開始年齢を遅らせることで、受給額が1カ月につき0.7%増える「繰下げ受給」があります。
例えば、65歳から受給を開始する予定を75歳0カ月まで繰り下げると、84%増額となります。これは、長期間働くことができる人や、他の収入源がある人にとって有利な選択肢となります。
5.3 年金を増やす方法はあるのか?
年金を増やす方法はいくつかあります。自営業やフリーランスの方は、国民年金の付加保険料を支払うことで、将来の受給額を増やせます。
また、厚生年金に加入する働き方に切り替えることも一つの方法です。
さらに、老後資金を増やすという意味では、投資信託やiDeCo(個人型確定拠出年金)などを利用して、自身で資産運用を行うのも選択肢です。ただし、運用にはリスクがあることに注意が必要です。