次世代のディスプレー・照明技術として期待を集めているミニLED、マイクロLED技術。既存のLEDのチップサイズが300~350μm角であるのに対し、ミニLEDは100~200μm角、マイクロLEDは数十μm角と小さい。この小さなLEDチップを高密度に並べて点灯を制御すれば、これまでにないディスプレーや照明光源として利用できる。すでにミニLEDは、液晶ディスプレーの高性能バックライト光源として商品化され始めているが、間髪入れずに自動車用照明として実用化を模索する動きも出始めた。

自動車部品大手のマグナがLED合弁会社を設立

 カナダの自動車部品メーカー、マグナ・インターナショナルは8月28日、ミニ&マイクロLEDベンチャーの米ロヒニ(Rohinni)と米ミシガン州ホリーに自動車用照明の合弁会社「Magna Rohinni Automotive」を設立すると発表した。ロヒニの薄膜ミニ&マイクロLED技術を独占的に使用し、マグナの制御技術と融合して、新たな自動車用照明を商品化する考えだ。

 ロヒニは、Lumosと呼ぶLEDチップの高速実装技術を持ち、LEDをフレキシブルなフィルム上に実装したミニ&マイクロLEDシート「PiXey」を商品化している。これまでフレキシブルなバックライトやキーボードの部品として展開しており、台湾のキーボードスイッチメーカーKOJAと2016年に合弁会社「luumii」を設立している。

 今回新設する合弁会社は、主に自動車用にミニ&マイクロLED製品を設計・開発し、チップを高速実装して大量生産する工程を手がける見通し。これに際してマグナはロヒニに出資して少数株主になった。

 ロヒニのマシュー・ガーバーCEOは「マグナの自動車市場における長年の経験によって、この合弁会社はグローバルブランドになる」と述べた。また、マグナCTOのSwamy Kotagiri氏は「ロヒニとの合弁会社は、自動車業界に前例のない薄くてフレキシブルな照明技術をもたらす」と期待を語っている。

台湾メーカーには米社から開発依頼

 台湾のジャスパーディスプレー(Jasper Display)は、「米国のパートナー企業から高輝度ミニ&マイクロLEDを車載用ヘッドライトやヘッドアップディスプレー(HUD)に使いたいという要望を受けている」と語る。認定取得などに時間を要するため「商品化までには2~3年かかる」とみているが、車載用にさらなる高輝度化を図りつつ、まずは欧州メーカーと開発しているAR(拡張現実)グラス用のフルカラーLEDディスプレーの商品化を進めるという。

 ジャスパーディスプレーはシリコン駆動回路(シリコンバックプレーン)とドライバーICの設計技術に強みを持ち、これまではLCOS(Liquid Crystal on Silicon)ディスプレー向けにシリコン技術を提供してきた。現在は、SLM(Spatial Light Modulators)技術を用いたホログラフィック技術の実用化を進めているほか、米国に開発拠点を持つスウェーデンのミニ&マイクロLEDベンチャーのgloと共同で、0.55インチおよび0.7インチのマイクロLEDディスプレーを開発したことを明らかにしている。

オスラムも欧州ベンチャーと技術契約

 このほか、独オスラム傘下のLEDメーカーとして車載用にも数多くの供給実績を持つオスラムオプトセミコンダクターズは、LEDのマイクロトランスファー・プリンティング技術を持つアイルランドのX-Celeprintと3月に技術・特許ライセンス契約を結んだと発表した。

 X-Celeprintのマイクロトランスファー・プリンティング技術はイリノイ大学のジョン・ロジャース教授らが開発したもので、マイクロデバイスを任意の基板上にスタンプのように印刷できる。マイクロLEDディスプレーやRFID、スマートカード、フレキシブルデバイスといった様々な用途に利用できると期待されている。

 オスラムオプトのチップ開発前責任者、マーティン・ベリンジャー博士は「この技術により、我々は非常に小さい領域で、ますます多くの機能を要求するLED製品を開発することができるようになる。さらに、様々なテクノロジーを迅速かつ正確に組み合わせるための革新的なアプローチを提供する」と述べており、自動車分野への応用も進めていくとみられる。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏