3. 老後も厚生年金に加入しながら「働くメリット」
最後に、老後も厚生年金に加入しながら働く「メリット」について見ていきましょう。
本記事で紹介した「在職老齢年金制度」は、厚生年金に加入しながら働くことを前提にした制度であり、加入しなければ年金が減額されることはありません。
とはいえ、厚生年金に加入しながら老後も働き続けた場合、従来の年金額よりもさらに増やすことができるというメリットがあります。
この仕組みは「在職定時改定」と呼ばれ、65歳から70歳の間に厚生年金保険料を納めると、毎年10月に年金額が見直されるのです。
年金を受け取りながら働き続ける場合、在職中に毎年1回、在職定時改定によって年金額が増加する点は大きな利点と言えます。
さらに、今後「在職老齢年金制度」の見直しが進めば、より安定した収入の確保がしやすくなるとともに、年金額の増加も期待できるでしょう。
老後も働く選択を考えている方は、今一度「どのような条件下で働くか」を見直すきっかけにできると良いでしょう。
4. 本格的な議論はこれから。年金以外の備えを考えておこう
本記事では、在職老齢年金制度の概要と、現在議論されている基準額の引き上げおよび廃止案について解説しました。
基準額の引き上げや廃止はまだ決定事項ではなく、現在議論が行われている段階です。
シニア世代にとっては基準額の引き上げや廃止は歓迎すべきニュースかもしれませんが、現役世代にとっては年金給付水準が引き下げられる可能性があるため、懸念材料となるかもしれません。
シニア世代と現役世代の双方が納得できる改善案となるかどうか、今後の議論の行方に注目が集まります。
参考資料
- 総務省「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」
- 日本年金機構「さ行 在職老齢年金」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
- 日本年金機構「令和4年4月から在職定時改定制度が導入されました」
- 厚生労働省「在職老齢年金制度について」
和田 直子