日本では年金の実質的な目減りが続く中、定年後も働くシニアが増加傾向にあります。
総務省の「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」によると、65〜69歳の就業率は52.0%、70〜74歳の就業率は34.0%と、いずれも過去最高を記録しました。
年金を受け取りながら他の収入源を確保することは、老後の生活を安定させる有効な手段ですが、現行制度では一定の収入を超えると「年金が減額」される仕組みがあります。
しかし、年金が減額される制度である「在職老齢年金制度」は徐々に緩和されており、近い将来、廃止に向かう動きも見られます。
そこで本記事では、在職老齢年金制度の概要や、現在議論されている基準額の引き上げ・廃止案について解説します。
老後も働き続けることのメリットについても紹介しているので、あわせて参考にしてください。
1. 年金がカットされる「在職老齢年金制度」とは?
在職老齢年金制度とは、年金を受け取りながら厚生年金保険に加入して働き続ける場合、一定の収入を超えると年金の一部または全額が支給停止になる仕組みです。
支給停止となる基準額は、労働収入と年金収入の合計額に基づいて設定され、この基準を「支給停止調整額」と呼びます。
2024年度の支給停止調整額は50万円で、労働収入と年金収入の合計が50万円を超えると、年金の一部または全額が減額されます。
在職老齢年金制度によって支給停止となる年金額は、次の計算式で算出されます。
在職老齢年金による調整後の年金支給月額=基本月額 - (基本月額 + 総報酬月額相当額 - 支給停止調整額) ÷ 2
「基本月額」は加給年金額を除いた厚生年金の月額で、「総報酬月額相当額」は直近1年の標準賞与額の12分の1を指します。
基本的に、労働収入が高くなるほど年金の減額分が多くなりますが、具体的にどのくらい年金が減額されるのでしょうか。