2. 50万人の「働くシニア」が年金カットされている現状
前述の通り、老後も厚生年金に加入しながら働き続ける場合、一定の収入を超えると年金が減額される仕組みとなっています。
厚生労働省の「在職老齢年金制度について」によると、65歳以上で働きながら年金を受給している人の16%(50万人)が支給停止の対象となっています。
約50万人のシニアが年金を減額されていることから「働きすぎると損になる」状況が広がり、シニアの働き控えが進んでいます。
こうした状況を受け、政府は「在職老齢年金制度」の見直し案として、3つの案を提示しました。
- 案1:在職老齢年金制度の撤廃
- 案2:50万円の基準額を71万円に引き上げ
- 案3:50万円の基準額を62万円に引き上げ
政府が提示した案には、基準額を現在の50万円から「62万円」または「71万円」に引き上げる案と、制度を廃止する案があります。
ただし、厚生労働省の試算では、制度を廃止した場合、現在減額対象となっている約50万人分の年金削減額「4500億円」が新たに必要になるとされています。
これらの見直し案が実現すれば、働くシニアの年金給付が増加する一方で、年金財政の悪化が懸念されます。
結果として、現役世代の年金給付水準が引き下げられる可能性もあることから、慎重な議論が求められています。