老後の生活費として「2000万円が不足する」という、いわゆる「老後2000万円問題」が話題になったのは、2019年ごろのことです。
食品や電気・ガス料金の高騰が続く中、物価の上昇が止まらなければ、老後資金の不足額は2000万円どころではなくなる可能性もあります。このような背景から、老後のお金に対する不安を抱える人が増えているのは自然なことといえるでしょう。
筆者はファイナンシャルアドバイザーとして、これまで多くのお客様から「資産形成」に関する相談を受けてきましたが、「老後資金としていくら必要かが分からない」「自分がいくら年金を受け取れるか知らない」という声は少なくありません。
では、実際のところ、現在のシニア世帯はどのような状況にあるのでしょうか。たとえば、老後を迎えた70歳代の世帯では、どれくらいの人が「貯蓄3000万円以上」を持っているのでしょうか。
本記事では、70代のシニア世帯に焦点を当て、貯蓄額や年金額といったお金事情を詳しく解説していきます。さらに、記事の後半では、将来に向けた「老後対策」の方法についても、ファイナンシャルアドバイザーの視点からアドバイスをまとめています。
1. 【70歳代・二人以上世帯】「貯蓄3000万円以上」は何%?
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」を参考に、70歳代・二人以上世帯の貯蓄事情を確認していきます。
1.1 「貯蓄3000万円以上」の割合|70歳代・二人以上世帯
- 19.7%
1.2 「貯蓄額の平均・中央値」|70歳代・二人以上世帯
- 平均:1757万円
- 中央値:700万円
1.3 【貯蓄額一覧表】(金融資産を保有していない世帯を含む)|70歳代・二人以上世帯
- 金融資産非保有:19.2%
- 100万円未満:5.6%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:4.3%
- 300~400万円未満:4.7%
- 400~500万円未満:2.5%
- 500~700万円未満:6.2%
- 700~1000万円未満:5.8%
- 1000~1500万円未満:10.2%
- 1500~2000万円未満:6.6%
- 2000~3000万円未満:7.4%
- 3000万円以上:19.7%
70歳以上の二人以上世帯のうち、19.7%が「貯蓄3000万円以上」を保有していることがわかります。
また、全体の「貯蓄の平均額は1757万円」とされていますが、より実態を反映した「中央値は700万円」となっています。
70歳代というと、「退職金を受け取って裕福な老後を楽しんでいるのでは」と考える方もいるかもしれません。
確かに、貯蓄が3000万円以上ある世帯は約2割存在しますが、貯蓄状況には明確な二極化が見られます。
具体的には、70歳以上の二人以上世帯において「貯蓄がゼロの世帯は19.2%」であり、「貯蓄500万円未満の世帯は22.2%」となっています。
老後の主な収入源として「年金」が挙げられますが、2024年度の年金受給額はいくらになるのでしょうか。
次章では、2024年度における国民年金と厚生年金の具体的な年金額例を見ていきます。