6. 時間を味方につけることが重要
今回は、70歳代のシニア世帯の貯蓄や年金額などのお金事情を見ていきました。平均受給額を見ても、年金だけでは老後安心できないと感じられた方も多いでしょう。実際、年金受給額は個人ごとに異なり、これまでの収入や加入期間によって大きな差が生じます。
そのため、まずは「自分がいくらの年金を受け取れるのか」を確認することが、老後対策の第一歩です。年金の受給見込み額を知るためには、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を活用するのがよいでしょう。
貯蓄については「先取り貯蓄」が基本の考え方です。給料をもらったら、まず貯蓄分を確保し、残りで生活費をやりくりする方法です。「毎月いくら貯めるのか」という具体的な目標を立て、それを自動的に実行できる仕組みを作ることで、無理なく貯蓄が進められます。
ただし、預貯金だけでは物価の上昇に対応しきれない場合があります。そこで注目されているのが「資産運用」です。資産運用は「お金に働いてもらう」方法ですが、投資にはリスクがつきものです。そのため、投資を始める際には、リスクの仕組みを理解した上で、慎重に選択することが大切です。
リスクを抑えるための基本的な考え方は「長期・分散投資」です。投資先を1つに絞るのではなく、株式、債券、投資信託など、複数の資産に分散投資することで、リスクを軽減することが可能です。また、毎月一定額をコツコツと投資していく「積立投資」を行うことで、購入価格を平準化する効果が期待できます。
老後の不安を和らげるためには、「時間を味方につける」ことがポイントです。若いうちから始めれば、無理のない金額でも資産を増やしやすくなります。
老後に向けた対策は、早ければ早いほど選択肢が広がります。まだ何も準備をしていない方も、まずは年金の受給見込みを確認し、老後に必要な資金の目安を把握するところから始めてみてください。
7. 【ご参考】70歳代・二人以上世帯の貯蓄額(金融資産保有世帯のみ)
- 100万円未満:7.0%
- 100~200万円未満:6.3%
- 200~300万円未満:5.4%
- 300~400万円未満:5.8%
- 400~500万円未満:3.1%
- 500~700万円未満:7.7%
- 700~1000万円未満:7.2%
- 1000~1500万円未満:12.7%
- 1500~2000万円未満:8.2%
- 2000~3000万円未満:9.1%
- 3000万円以上:24.3%
<貯蓄額平均と中央値>
- 平均:2188万円
- 中央値:1100万円
参考資料
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
- 厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況 主な年齢の平均余命」
- 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年(令和6年)7月分(2024年8月23日公表)」
- 厚生労働省「受給者のみなさんへ」
- 厚生労働省年金局「年金制度基礎資料集2024年7月」
- 厚生労働省「男女の賃金の差異の情報公表状況(令和6年1月19日時点)」
- 内閣府男女共同参画局「令和6年版 男女共同参画白書」
- 厚生労働省「離職理由別離職率の推移」
菅原 美優