物価の上昇により、家計が厳しくなっている方が増えているようです。筆者はファイナンシャルプランナーとして日々お客様とお話しする中で、「物価が上がって生活が大変だ」という声をよく耳にします。
出生数は減少傾向にあり、少子高齢化がますます加速しています。少子高齢化が進むと、現役世代の負担が大きくなり、年金制度にも影響を与えます。
公的年金は「現役世代が支払った保険料を年金支給の財源とする仕組み」のため、支える世代が減れば、その負担が重くなるのは避けられません。こうした状況では、年金制度そのものの維持が課題となってきます。
老後の生活を支える大切な資金である「年金」ですが、皆さんはどれくらい年金制度の仕組みを理解しているでしょうか?
年金の仕組みをしっかり理解しておくことは、老後の生活設計にとってとても重要です。
本記事では老後の生活設計や公的年金制度に対する意識調査の結果を確認した後、年金から天引きされるお金や、実際に現代シニアが受け取っている年金額データについても解説していきます。
1. 老齢年金の仕組みや役割「あなたはどこまで知ってる?」
私たちの多くが将来お世話になる「年金」。
特に老後の生活設計とは切っても切り離せない存在です。
しかし、その仕組みやルールは複雑で、理解しにくい部分も多いですよね。
厚生労働省年金局が公表した「生活設計と年金に関する世論調査」から、老齢年金の仕組みや役割についての認識に関する調査結果を見てみましょう。
1.1 老齢年金の仕組みや役割、どこまで知っている?
全国の18歳以上の日本国籍を持つ5000人を対象に行われたこの調査では、老後の生活設計や公的年金制度に対する意識やニーズについて尋ねています。
その中で、「老齢年金の仕組みや役割」についてどの程度知っているかについての設問もあり、以下がその回答結果となっています。
- 学生含め20歳以上の国民は、加入する義務がある:82.0%
- 60~75歳の間で受け取り始める時期を選択できる:73.0%
- 現役で働く世代が、高齢者を扶養する制度である:66.8%
- 保険料の納付状況に応じて年金額が変動する:62.5 %
- 生涯にわたり年金を受給できる:56.4
- 物価や賃金の変動に応じて年金額が調整される:42.3%
- 「ねんきんネット」というサービスが活用できる:30.2%
- 「公的年金シミュレーター」というサービスが活用できる:8.4%
- いずれも知らない:5.1%
- 無回答:1.4%
「学生を含めた20歳以上の国民は、国民年金に加入する義務がある」ことを知っている人は、82.0%でした。
また、「60~75歳までの間で受け取り始める時期を選択できる」、つまり繰下げ・繰上げ受給の存在を知っている人は、73.0%に上りました。
一方で、「物価や賃金の変動に応じて年金額が調整される」ことを知っている人は42.3%、「公的年金シミュレーター」というサービスが活用できることを知っている人は8.4%にとどまりました。
このように、年金の内容によって認知度に差があることがわかりますね。
日本では、原則として20歳以上60歳未満のすべての人が公的年金制度の対象ですが、実際には細かい仕組みやルールを知らない現役世代は多いのではないでしょうか。
次章では、いわゆる「年金の盲点」とも言えるポイントの一つ、「老齢年金からの天引き」について整理してお伝えしていきます。