皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。

今回は、7月の日銀の金融政策決定会合(以下、会合)の結果を、私なりに評価したいと考えます。

  • 7月31日に、日銀は「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」を発表した。7月会合については、事前のメディアからの報道が相次いでいたこともあって、注目度が大きかったと思われる。
  • 加えて、会合の内容をどのように評価すべきかについても、解釈が難しい面がある。
  • 解釈のポイントは、金融政策が「①金融緩和を強化する方向」か、あるいは「②金融緩和が弱まる方向(金融政策の正常化と呼ばれる)」のどちら側に変更されたかであると考えている。
  • 結論として、黒田総裁の記者会見の内容から判断する限り、「①金融緩和を強化する方向」と解釈すべきと思われる。
  • 一方で、柔軟化で今後の日銀の行動の自由度が広がったため、実際の日銀の行動が、どのようなものになるかについて、継続して留意する必要がある。

 

前回の記事において、現在の金融緩和政策を正常化方向に修正する可能性は限定的と考えることをお伝えしました。

実際の決定内容については、当社臨時レポート2018年7月31日付「日銀は金融緩和の長期化を視野に、政策の持続性強化策を発表」において、その内容自体はお伝えしているため、私がポイントと考える部分をお話したいと考えます。

まず、事前の報道でも一番ポイントになっていたと思われる「長期金利の目標誘導水準の柔軟化」です。黒田総裁の記者会見内容を踏まえれば、長期金利の誘導目標は、「ゼロ%程度」とされるものの、-0.2%~+0.2%の範囲内で変動が許容されることとなります。

これまで、「ゼロ%程度」とされていた水準が、上限の+0.2%に張り付けば、実際にこれがどの程度悪影響を与えるかは別として、「②金融緩和が弱まる方向」と解釈することも可能です。

しかし、決定会合後の記者会見で黒田総裁は、「金利の引き上げは全く意図していない」と発言し、これを言葉通りに解釈すれば、金利は上下はするものの、長い期間の平均値は「ゼロ%程度」となると考えることが自然です。

加えて、これはあまり報道されていないように思われますが、金利調節方針の中に、「経済・物価情勢等に応じて」という文言が追加され、物価情勢、すなわちインフレ見通しが弱い中では、±0.2%の範囲内で、低めに調整されると解釈することも可能なように思います。

次に、ETFの買い入れについても、柔軟化が実施され、買入れ額は「市場の状況に応じて」、「上下に変動しうる」とされました。

これも、先ほどの長期金利と同じで、金額が仮に減少すれば、「②金融緩和が弱まる方向」と解釈することも可能です。そして、実際の買い入れ金額が増加するか、はたまた減少するかはこれからの日銀の実際の行動をみてみないと分かりません。

これ以外については、フォワードガイダンスの採用は、「①金融緩和を強化する方向」に働くと考えて良さそうです。

黒田総裁は、「金融緩和政策の出口に向かい、金利を引き上げるといった一部の観測は完全に否定できた」と発言しました。

日銀の金融政策が出口に向かうとの思惑を一番強く持っていた市場は、国内の債券市場であると私は考えています。

図表1は、日本の10年国債利回りの推移を示したものですが、「②金融緩和が弱まる」可能性を意識して、会合の前に金利は上昇(価格は下落)し、その後も大きな変動を繰り返して、落ち着きどころを探る展開となっています。

しかし、ドル高・円安が進展した為替市場や株式市場では、日銀が出口に向かうという観測は、現時点では相当弱まったと思われます。

前述のとおり、実際の日銀の行動には注意が必要ですが、とりあえずは決定会合は無事通過できたと評価できると考えます。

図表1:日本10年国債利回り
2018年3月30日~2018年8月2日:日次

出所:ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成

(2018年8月3日 9:30頃執筆)

柏原 延行