2. 口座凍結前にお金を引き出すことの意外なリスク

「急ぎで資金が必要」と口座凍結前の故人の預金を引き出すと、いくつかのリスクが生じます。

2.1 家族でもめる原因になる

裁判所が発表した「令和5年司法統計年報 3家事編」によると2023年中に全国の裁判所で取り扱った遺産分割事件件数は1万3872件発生しています。

故人の預金は、相続財産として遺産分割協議の対象です。

このことから、相続人とはいえ無断で預金を引き出すと、他の相続人から不正行為と捉えられトラブルに発展する可能性があります。信頼関係が崩れ、今後の関わりに支障が出る恐れがあります。

2.2 預金の引き出し行為で相続放棄できなくなる可能性がある

必要な資金でも、銀行に連絡せずに預金を引き出すと、相続を単純承認したとみなされて相続放棄ができなくなる可能性があります。

単純承認とは、プラスの財産だけでなく、借金や未払い金などマイナスの財産も全て相続することをいいます。

そのため、後で多額の借金などが判明し相続放棄をしたい場合でも、預金の引き出しをしていたことで「財産の全てを相続する意思を示した」とみなされ、負債も相続しなければならない可能性があります。

それでは葬儀や医療費、手続きなどでまとまった費用が必要になったときは、どのように対処したらいいのでしょうか。

次の章では、どうしてもお金が足りないときの対処法を解説します。