4. 年金の繰上げを決定するときの注意点
年金額の支給開始年齢を決定するときに、もう1つ注意点があります。
それは、支給額が高くなるにつれて「所得税」「住民税」「健康保険料」が高額になる可能性があるということです。これら3つの納付額は、年間の収入から算出された課税所得金額から計算されます。
年金の収入には「公的年金等控除」という、年間の収入から所得を計算する際に差し引ける控除額がありますが、例えば年金の受給年齢を早めると、公的年金等控除が適用される年数も多くなることになるため、その点において税金や保険料がお得になります。
さらに、所得税は年間の所得が上がるにつれて税率が上がる仕組みになっているため、年金を繰下げて年間の受取額を上げることで所得税の税率が高くなってしまう可能性もあります。
5. 総合的に判断して最適な選択を
今回は、年金の支給開始年齢の考え方と、90歳までの受給金額の計算を行いました。
上記はあくまでも平均を用いた一例であり、実際の自身の年金受給額や家族構成によっても、最適な受給開始年齢は異なってきます。
さらに、生涯の合計受取額だけでなく、所得税や健康保険料なども視野に入れて、自身のライフプラン・健康状態・経済状況などを総合的に判断して最適な選択をすることが大切です。
必要に応じて、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみることも検討してください。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」
- 厚生労働省「いっしょに検証!公的年金〜年金の仕組みと将来〜 第04話 日本の公的年金は2階建て」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
- 日本年金機構「所得金額の計算方法」
斎藤 彩菜