50代になると、自分の親族の相続に関わる場合が増えると同時に、自分自身の相続についても考えておく必要が出てきます。

【図表1枚目/全3枚】死亡数及び死亡率の年次推移。2枚目は「直近5年間の遺産分割事件数」

死亡数と死亡率のグラフ

出所:厚生労働省|令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況

2022年の死亡者数は約156万人、同年の家庭裁判所への遺産分割協議調停申立件数は1万2982件でした。この2つの数字から約120件に1件の割合で家庭裁判所での調停となっているという見方もできます。

直近5年間の遺産分割事件数

直近5年間の遺産分割事件数の推移表

出所:法務省「司法統計」をもとに筆者作成

特に子どものいない夫婦の場合、相続に関して知っておかないと、遺産分割による調停申立てが発生しかねません。

本記事では、子どものいない夫婦が50代で知っておきたい2つのことについて解説します。ぜひ参考にしていただき、お役立てください。

1. 配偶者以外の相続人のチェック

子どものいない夫婦が押さえておくべきこととして、相続人のチェックがあります。配偶者以外に相続人がいるかどうかを確認しておくことが重要です。相続人の調べ方や注意点について解説します。

1.1 法定相続人の範囲

相続人の範囲は、民法に明記されており、死亡した人の配偶者は常に相続人となります。

相続人には順位があり、第一順位は死亡した人の「子ども」、第二順位は「親」です。第三順位は「兄弟姉妹」となります。ただし、「兄弟姉妹」が死亡している場合、死亡している兄弟姉妹の子が相続する権利を有します(代襲相続)。

1.2 相続人の調べ方

相続人を調べる方法は、以下の順序で行います。

1 最新の戸籍謄本の取得

はじめに、 将来の被相続人となる人の最新の戸籍謄本を市区町村役場で取得します。ここには、配偶者や子どもなどの基本的な情報が含まれています。

2 過去の戸籍をさかのぼる

最新の戸籍から過去の戸籍にさかのぼっていき、出生から現在に至るまでのすべての戸籍謄本を集めます。謄本をさかのぼっていくことで、過去の婚姻や離婚、養子縁組などの情報の確認が可能です。

過去に婚姻していて子どもがいる場合、子どもは相続人となります。

3 相続人の特定

取得した戸籍謄本をもとに、法定相続人が特定できます。

これまで戸籍謄本の取得は「本籍地のある市区町村」に請求する必要あったため、遠方の場合などには不便でした。これが、2024年3月1日に「戸籍証明書などの広域交付」が始まり、本籍地以外の市区町村役場の窓口でまとめて請求できるようになっています(※)。

※コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍を除く
※一部事項証明書、個人事項証明書は請求不可

1.3 注意点

子どもがいない夫婦の相続については、いくつか注意すべき点があるので紹介します。

  • 相続分の割合

配偶者と直系尊属(父母や祖父母)が相続人の場合、配偶者が2/3、直系尊属は1/3を相続します。また、相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合は、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4を相続します。

  • 遺留分

直系尊属(親や祖父母)が生存している場合、遺留分を考える必要があります。遺留分とは、相続人が最低限相続できる財産の割合をいいます。兄弟姉妹には遺留分がありませんが、直系尊属には遺留分がある点に注意しましょう。

  • トラブルの防止

相続人が複数いる場合、遺産分割協議が必要です。特に、仲が悪い親族が相続人にいる場合、トラブルが発生しやすい傾向があります。

未然にトラブルを防ぐ手段として、遺言書の作成があります。