国家公務員一般職の採用試験は、すでに大卒者の合格発表を8月13日に終えています。現在は、高卒者の試験選考が行われています。

地方公務員もすでに採用試験が行われており、全国さまざまな自治体で職員を募集している最中です。

学生や第二新卒が公務員を志望する理由として「時代に左右されない安定性」や「福利厚生の充実」などが挙げられます。一方で、公務員の業務領域は社会保障、福祉、経済、インフラ、財政と多岐にわたります。そのため、部署によっては「激務にもかかわらず給料が低い」といったケースもあるようです。

公務員の給与体系は、民間企業とどう異なるのでしょうか。この記事では、公務員の給与や退職金について、元公務員の視点を交えて解説します。

1. 国家公務員と地方公務員の違い

公務員は「国家公務員」と「地方公務員」の2つに分かれます。どちらも職業は同じですが、職種や勤務先は大きく異なります。それぞれの違いは以下のとおりです。

【写真全9枚/1枚目】国家公務員と地方公務員の違い。写真後半では公務員と民間企業の平均給与・退職金を比較1/9

国家公務員と地方公務員の違い

出所:人事院「国家公務員の紹介」、総務省「地方公務員の区分について」をもとに筆者作成

国家公務員は、各省庁職員や国税専門官など、国家全体にかかわる仕事をする職業です。国の政策や各省庁の方針に基づき業務をしています。

一方、地方公務員は地方自治体で行政サービスを提供する職業です。役所・役場の職員のほか、市区町村立病院の医師や看護師、公立学校の先生、警察官、消防士とさまざまな職種があるのが特徴です。

では、国家公務員と地方公務員の給与・退職金にはどのような違いがあるのでしょうか。次章以降で解説していきます。

2. 国家公務員の平均給与と退職金はいくらか

国家公務員の平均給与・退職金は、以下のとおりです。

  • 平均給与:41万4801円
  • 退職金(定年):2112万2000円

では、それぞれをより詳細に見てみましょう。

国家公務員の退職金4/9

国家公務員の退職金

出所:内閣官房「退職手当の支給状況」をもとに筆者作成

〈平均給与〉

  • 全俸給表:41万4801円
  • 行政職俸給表(一):40万5378円
  • 行政職俸給表(二):33万553円
  • 専門行政職俸給表:45万499円
  • 税務職俸給表:42万9500円
  • 公安職俸給表(一):38万8322円
  • 公安職俸給表(二):41万3124円
  • 海事職俸給表(一):45万7470円
  • 海事職俸給表(二):37万6531円
  • 教育職俸給表(一):47万5312円
  • 教育職俸給表(二):46万304円
  • 研究職俸給表:56万4510円
  • 医療職俸給表(一):84万5153円
  • 医療職俸給表(二):36万2560円
  • 医療職俸給表(三):36万5921円
  • 福祉職俸給表:38万6299円
  • 専門スタッフ職俸給表:60万9589円
  • 指定職俸給表:103万3216円
  • 特定任期付職員俸給表:64万2691円
  • 第一号任期付研究員俸給表:47万6310円
  • 第二号任期付研究員俸給表:39万9592円

※給与は扶養手当や地域手当など諸手当を含む。

〈退職金〉

  • 合計:1104万3000円
  • 定年:2112万2000円
  • 応募認定:2524万7000円
  • 自己都合:274万5000円
  • その他:212万1000円

国家公務員の給与は職種ごとに差があります。特に医療職や指定職、研究職といった職種は給与が高くなっています。指定職とは、一般的な管理職クラスのことを指します。省庁の審議官・部長や局長などが該当する職種です。

また、退職金も平均で1104万円となっています。特に定年時は2000万円超えとなっています。手取り金額は2000万円よりも少なくなりますが、それでも老後生活の資産の一つとして十分に活用できる金額です。

では、地方公務員の給与・退職金も確かめてみましょう。

3. 地方公務員の給与と退職金はいくらか

地方公務員の給与と退職金は、以下のとおりです。

  • 平均給与:35万5807円
  • 退職金(定年):2174万7000円

それぞれの詳細を見ていきましょう。

 

 

〈平均給与〉

  • 全職種:35万5807円
  • 一般職員(行政職・医師・看護師・消防職など):34万1円
  • 教育公務員(教職):38万5777円
  • 警察職:36万9082円
  • 臨時職員:29万9261円
  • 特定地方独立行政法人職員: 34万782円

※給与は扶養手当や地域手当など諸手当を含む。

〈退職金〉

  • 全職種
    ・退職金の平均:1228万8000円
    ・自己都合:196万3000円
    ・11年以上25年未満勤続後の定年退職:1065万5000円
    ・25年以上勤続後の定年退職:2174万7000円
  • 一般職員(行政職・医師・看護師・消防職など)
    ・退職金の平均: 1153万1000円
    ・自己都合:223万1000円
    ・11年以上25年未満勤続後の定年退職:1103万9000円
    ・25年以上勤続後の定年退職:2101万5000円
  • 教育公務員(教職)
    ・退職金の平均:1286万9000円
    ・自己都合:141万6000円
    ・11年以上25年未満勤続後の定年退職:1000万6000円
    ・25年以上勤続後の定年退職:2259万9000円
  • 警察職
    ・退職金の平均:1613万2000円
    ・自己都合:331万8000円
    ・11年以上25年未満勤続後の定年退職:1097万4000円
    ・25年以上勤続後の定年退職:2234万1000円
  • 特定地方独立行政法人職員
    ・退職金の平均:451万円
    ・自己都合:72万1000円
    ・11年以上25年未満勤続後の定年退職:702万6000円
    ・25年以上勤続後の定年退職:2208万9000円

地方公務員の給与は、国家公務員に比べると低めです。教育公務員や警察職は地方公務員の中では比較的給与が高めですが、国家公務員の平均額に比べると約3万円〜4万5000円低くなっています。

一方で、定年退職時の退職金は2174万7000円と、国家公務員の2112万2000円を上回っています。職種にかかわらず2000万円以上の退職金が出ることが、平均を押し上げている要因と考えられます。

では、公務員の収入と民間企業で働く場合の収入について、次章で比較してみましょう。

4. 民間企業と公務員、どちらの方が収入が多い?平均給与と退職金を比較

民間企業の業種別給与も含めて、民間企業と公務員の収入を比較してみましょう。

民間企業の業種別の平均給与9/9

民間企業の業種別の平均給与

出所:国税庁「令和4年分民間給与実態統計調査」をもとに筆者作成

〈国家公務員〉

  • 平均給与:41万4801円
  • 退職金:2112万2000円

〈地方公務員〉

  • 平均給与:35万5807円
  • 退職金:2174万7000円

〈民間企業〉

  • 平均給与:38万1333円
  • 退職金:1269万2000円

※民間企業の平均給与については、年額を12で割って算出しています。また、退職金については、勤続年数40年での定年退職の数字を記載しています。

〈業種別平均給与〉

  • 建設業:44万833円
  • 製造業:44万4167円
  • 卸売・小売業:32万円
  • 宿泊業・飲食サービス業:22万3333円
  • 金融業・保険業:54万6667円
  • 不動産業・物品賃貸業:38万833円
  • 運輸業・郵便業:39万7500円
  • 電気・ガス・熱供給・水道業:62万2500円
  • 情報通信業:52万6667円
  • 学術研究・専門・技術サービス業、教育・学習支援業:45万3333円
  • 医療・福祉:34万833円
  • 複合サービス業:42万1667円
  • サービス業:31万4167円
  • 農林水産・鉱業:28万833円

民間企業の平均給与は38万1333円で、地方公務員と国家公務員の中間あたりの金額となっています。一方、退職金の平均は1269万2000円と、公務員に比べて大幅に低くなっています。これは、企業によって退職金の出る企業と出ない企業があるためだと考えられるでしょう。

民間企業の平均給与を業種別に見てみると、電気・ガス・熱供給・水道業や金融業・保険業、情報通信業は公務員の平均額を大きく上回っています。しかし、農林水産・鉱業や宿泊業・飲食サービス業は平均給与が20万円台と、公務員よりも少ない状況です。

よって、民間と公務員の給与差は業種や勤続年数などで異なり「公務員は民間企業よりも多く給料をもらっている」とは一概にいい切れないのです。

5. まとめにかえて

国家公務員と地方公務員の平均給与には幾分かの差がありました。また、民間企業の平均給与は国家公務員と地方公務員の間くらいで「どちらが多いか」は職種や業種により異なるようです。

公務員の給与収入は時代に左右されない安定性が魅力といえます。しかし、なかには民間企業よりも低い給与で働いていたり、国会・議会対応で深夜まで業務に従事したりと厳しい実態もあります。

民間・公務員問わずすべての労働者の待遇改善がなされ、誰もが働きやすい環境が整備されていけば、より強靭な社会が構築できるでしょう。

参考資料

石上 ユウキ