4. 公的年金だけで暮らす世帯は半数以下
厚生労働省が公表した「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」によると、年金収入「だけで」生活する高齢者世帯は41.7%。
残りの58.3%の世帯は、貯蓄の切り崩しや勤労収入、不労所得、さらには家族からの仕送りといった年金以外の収入で生活していると考えられますね。
5. まとめにかえて
今回は、60歳代二人以上世帯の貯蓄額や、今のシニア世代が受け取る年金額データなどを眺めてきました。
住宅費や教育費といったコアな支出に追われる働き盛り世代。「老後資金のことを意識する余裕なんてない!」と感じるのも致し方ないことかもしれません。
ライフステージごとに「削れない支出」というものがありますから、毎月の貯蓄額を大幅に増やすことができない時期もあるでしょう。そんなときも、支出と収入を見える化し、メリハリのあるお金の使い方を意識することは忘れずにいたいものですね。
筆者が前職の信用金庫時代に出会ってきた「富裕層」は、自分自身の「支出と収入」をしっかりと把握されていました。お金の出入りを見える化することで、価値のあるものだけにお金を使い、不要な支出を減らして貯蓄に回す。さらには余剰資金で資産運用を行い、お金を増やしていく好循環を作っている人が多かった印象です。
「家計管理スキル」は付け焼刃で完成するものではありませんが、若いうちに身につけておけば一生の財産ともなり得るものでしょう。
今回見てきた貯蓄額や年金額のデータはあくまで目安。自分自身の過ごし方によって、入ってくる金額や必要となる金額は変わります。
理想の老後は人それぞれですが、思い通りにことが運ぶとは限りません。「人生100年時代」に老後を過ごす私たちは、遠い将来に向けたお金の準備を、丁寧に進めていく必要があるでしょう。
6. 【ご参考】年金に関する疑問や不安を解消!よくある質問を解説
日本の公的年金制度は複雑で、多くの人がさまざまな疑問を抱えていることでしょう。ここでは、年金に関するよくある質問を取り上げ、その解答を解説します。
6.1 年金の主な種類と仕組みは?
日本の公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造になっています。
国民年金は日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入する基礎年金で、厚生年金は会社員や公務員が加入するものです。
国民年金は一定の保険料を納付し、将来の年金額が決まるのに対し、厚生年金は収入に応じた保険料を支払うため、将来の受給額にも差が出ます。
6.2 「繰下げ受給」とはどんな制度?
年金の受給開始年齢を遅らせることで、受給額が1カ月につき0.7%増える「繰下げ受給」があります。
例えば、65歳から受給を開始する予定を75歳0カ月まで繰り下げると、84%増額となります。これは、長期間働くことができる人や、他の収入源がある人にとって有利な選択肢となります。
6.3 年金を増やす方法はあるのか?
年金を増やす方法はいくつかあります。自営業やフリーランスの方は、国民年金の付加保険料を支払うことで、将来の受給額を増やせます。
また、厚生年金に加入する働き方に切り替えることも一つの方法です。
さらに、老後資金を増やすという意味では、投資信託やiDeCo(個人型確定拠出年金)などを利用して、自身で資産運用を行うのも選択肢です。ただし、運用にはリスクがあることに注意が必要です。
参考資料
- 首相官邸「岸田内閣総理大臣記者会見」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」
山本 大樹