9月16日は敬老の日です。長年社会に尽くしてきた高齢の人を敬い、長寿を祝う日とされています。自治体によっては「敬老祝い金」を高齢者に渡しているところもあるようです。

高齢者を支援する公的サービスはさまざまなものがありますが、なかでも恩恵を感じやすいのが「敬老パス」でしょう。敬老パスは公共交通機関を格安または無料で使えるものであり、買い物やお出かけ時に役立ちます。

しかし、敬老パスは制度のある自治体とない自治体が存在します。また、高齢者のみが使えるサービスのため、馴染みのない人も多いでしょう。この記事では、敬老パスについて、概要や申請方法などを解説します。

1. バスや電車がお得に!申請必須の「敬老パス」とは

敬老パスとは、高齢者の生活支援や社会参加を支援する公的サービスです。

一般的には、バスや地下鉄の乗車が割引価格となったり、無料で乗れたりする「特別乗車券」が交付されることが多いです。交付時には、いくらかの負担金を支払います。

たとえば、横浜市では70歳以上の人に対して敬老パスを発行しています。敬老パス所有者は、横浜市営バス、横浜市営地下鉄、金沢シーサイドライン、江ノ電バスなどを運賃なしで乗車できます。

所得金額に応じて負担金を支払う必要がありますが、金額は数千円程度であり、何度も公共交通機関を使えばすぐに元が取れます。

では、敬老パスの対象者はどのような人なのでしょうか。次章で解説します。

2. 敬老パスの対象者は?

敬老パスの対象者は、高齢者に限定されています。ただし、自治体によって交付できる年齢に違いがあるため、対象となる人は自治体ごとに異なると考えてよいでしょう。たとえば、以下の自治体で敬老パスの対象となる人の条件を比較してみましょう。

【写真4枚】自治体ごとの敬老パスの対象者。写真後半では各自治体の敬老パスの利用者負担額を解説1/4

自治体ごとの敬老パスの対象者

出所:札幌市「敬老優待乗車証(敬老パス)」仙台市「敬老乗車証」名古屋市「敬老パスの交付」大阪市「70歳になったら敬老優待乗車証(敬老パス)が利用できます」鹿児島市「敬老パス」をもとに筆者作成

  • ​​札幌市:札幌市内に住民登録があり、引き続き居住している満70歳以上の人
  • 仙台市:仙台市内に住む70歳以上の人
  • 名古屋市:名古屋市に住む65歳以上の人
  • 大阪市:大阪市に住所のある70歳以上の人
  • 鹿児島市:市内在住の70歳以上の人

多くの自治体は70歳以上の自治体在住者を敬老パスの交付対象としています。ただし、名古屋市のように一部の自治体は65歳からと早いタイミングから敬老パスを交付しているようです。なかには敬老パスを交付していない自治体もあるため、自分の住む自治体で敬老パスの制度があるかどうか確認しておくとよいでしょう。

では、敬老パスのサービス内容について、次章で解説します。

3. 自治体の敬老パスのサービス内容

自治体ごとの敬老パスのサービス内容を紹介します。敬老パスは乗車賃の割引や無料が基本的なサービスですが、なかには独自のサービスを展開している自治体もあるようです。

川崎市、名古屋市、札幌市の3市を例に、サービス内容を紹介します。

3.1 川崎市

川崎市の敬老パスは、2種類のパスに分かれるのが特徴です。申請すれば無料で作成できる「高齢者特別乗車証」では、市内バスの運賃が半額になります。

さらに、負担金を別途支払うことで、期間中は無料でバス乗車ができる「高齢者フリーパス」の発行も可能です。

高齢者特別乗車証は、市から書類が届くため、それを記入・返送して手続きします。電子マネーの「Suica」や「PASMO」に付帯させる形でつくるため、乗車証発行にはSuicaやPASMOの発行が必須です。

一方、高齢者フリーパスは「川崎市内にあるバス事業者の券売所・営業所」か「川崎市内にある郵便局」に出向いて購入する必要があります。負担金の金額に応じて、無料で使える期間が決められています。

  • 1ヶ月無料:1000円
  • 2ヶ月無料:2000円
  • 3ヶ月無料:3000円
  • 6ヶ月無料:6000円
  • 12ヶ月無料:1万2000円

なお、JRなどの鉄道では敬老パスの利用はできません。

3.2 名古屋市

名古屋市の敬老パスは、少ない負担金で無料乗車ができる点や65歳になれば申し込める点など、他の自治体にないメリットがあるのが特徴です。

名古屋市の敬老パスの負担金は1000〜5000円で、所得金額に応じて負担金額が決まります。

名古屋市の敬老パスの負担金の額2/4

名古屋市の敬老パスの負担金の額

出所:名古屋市「敬老パスの交付」

また、敬老パスを電子マネーとして買い物や乗車賃の支払いなどで使えます。チャージできる金額は2万円までです。電子マネー機能の付帯により、無料乗車できない区間のバスや鉄道を使ったとしても、敬老パスで運賃を精算できます。

3.3 札幌市

札幌市の敬老パスは、負担金額に応じてポイントがチャージされ、チャージポイント分だけ市バスや地下鉄の乗車ができます。

札幌市の敬老パスの利用者負担額とチャージ額3/4

札幌市の敬老パスの利用者負担額とチャージ額

出所:札幌市「敬老優待乗車証(敬老パス)」

  • 負担金1000円:チャージ額1万円
  • 負担金3000円:チャージ額2万円
  • 負担金6000円:チャージ額3万円
  • 負担金8000円:チャージ額4万円
  • 負担金1万円:チャージ額5万円
  • 負担金1万3500円:チャージ額6万円
  • 負担金1万7000円:チャージ額7万円

最大7万円までの残高が利用できるため、頻繁にバスや地下鉄を使う人におすすめといえます。

なお、札幌市は2025年度以降に敬老パスの機能を拡張する予定です。街の事業参加や運動などでポイントを獲得し、そのポイントを交換することで公共交通機関が利用できるようになります。

また、市バスや地下鉄以外にJRやタクシーも利用対象とするとのことです。

一方で、チャージ額の上限を7万円から2万円に引き下げることも検討していますが、これに関しては反発の声があったのか、上限を4万円までとする形で調整しているようです。

4. 敬老パスの申請方法

敬老パスの申請は、基本的に自治体から送られてくる申請書などの書類に必要事項を記入して返送し、ICカードなどの到着を待つだけです。ここでは、神戸市の申請手順を例に紹介します。申請手順は以下のとおりです。

  1. 満70歳になる前に市から郵送される申請書を受け取る
  2. 届いた申請書に必要事項を記入して郵便ポストへ投函するか、電子申請で送る
  3. 満70歳の誕生日の前月下旬に届く敬老パスを受け取る

ただし、自治体によっては市区町村の窓口で申請したり、ICカードなどを買い求めたりする必要があります。申請時には、住んでいる自治体の申請方法をよく確認してから、手続きに入りましょう。

では、敬老パスを使うと、年間いくらくらいお得になるのでしょうか。次章で見ていきましょう。

5. 敬老パスは本当にお得?いくらで元が取れるのか

敬老パスで年間どれくらいお得になるのかは、自治体ごとに定められている負担金や運賃によって異なります。

たとえば、名古屋市の場合は敬老パスの利用で市バスや地下鉄が無料で乗れます。また、敬老パスの負担金は1000〜5000円です。

負担金が5000円の場合は、運賃300円の区間を9往復すれば元を取れます。普段バスや地下鉄などを使う区間の運賃にもよりますが、月1回以上区間を往復するのであれば敬老パスを申し込んだほうがお得でしょう。

また、札幌市の敬老パスは前述のとおりポイントをチャージして公共交通機関を利用するタイプのものです。チャージ額は最大7万円となっており、最低でも負担金の約4倍以上の金額が利用できます。

札幌市の敬老パスの利用者負担額とチャージ額3/4

札幌市の敬老パスの利用者負担額とチャージ額

出所:札幌市「敬老優待乗車証(敬老パス)」

  • 負担金1000円:チャージ額1万円
  • 負担金3000円:チャージ額2万円
  • 負担金6000円:チャージ額3万円
  • 負担金8000円:チャージ額4万円
  • 負担金1万円:チャージ額5万円
  • 負担金1万3500円:チャージ額6万円
  • 負担金1万7000円:チャージ額7万円

実質無料で最大5万3000円分のポイントがチャージされるため、市バスや地下鉄を使う人にとってはお得といえるでしょう。

6. まとめにかえて

敬老パスは、高齢者の外出支援や社会参加を補助する公的サービスです。負担金の元を取りやすいうえ、頻繁に公共交通機関を使う人ほどお得になるサービスといえるでしょう。

一方、費用負担の少なさから自治体で財源を用意するのが難しく、負担金の増加や事業廃止などを進める自治体もあるようです。

また、自治体ごとに独自性あるサービスが生まれていることから、公平性に欠けることも懸念されています。高齢者へ行き届いた支援が行われるよう、今後の事業のあり方については注視していく必要があるでしょう。

参考資料

石上 ユウキ