2024年10月からは、社会保険の適用事業所が拡大され、パートやアルバイトの人でも厚生年金保険に加入する機会が広がります。
厚生年金保険への加入は、給与から保険料が天引きされますが「老齢厚生年金」として65歳以降に年金を受給できます。
現代では、働き方は世帯ごとに大きく異なっています。夫婦どちらも正社員、会社員+パート、2人で自営業など、働き方のバリエーションはさまざまです。それぞれの働き方で、年金受給額はどのように変わるのでしょうか。
この記事では、働き方別に平均の年金月額と手取り年金額を解説します。世帯ごとに紹介するため、当てはまるものがある人はぜひ参考にしてください。
1. 働き方ごとの平均年金受給額
働き方別で、平均年金受給額を確かめてみましょう。今回は、厚生労働省の「年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年」の結果をもとに年間の平均年金額を紹介します。検証するパターンは、以下の5つです。
- 共働きで正社員の夫婦の場合
- 会社員(夫)×パート(妻)の場合
- 2人とも自営業の場合
- 会社員×専業主婦の場合
- 単身の会社員の場合
各パターンの平均額をおさえて、今後のマネープランの参考にしてみましょう。
1.1 共働きで正社員の夫婦の場合
共働きでどちらも正社員の夫婦の平均年金受給額は、以下のとおりです。
【写真全7枚】共働きでどちらも正社員の夫婦の平均年金受給額。2枚目以降でも複数パターンの年金額シミュレーションを掲載1/7
出所:厚生労働省「年金制度基礎調査 / 年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年 性別・本人の現役時代の経歴類型別・本人の公的年金年金額階級別 受給者数」をもとに筆者作成
- 夫の平均年金受給額:219万4000円
- 妻の平均年金受給額:140万8000円
夫婦どちらも正社員の場合は、男性で年間200万円以上、女性も年間140万円程度の金額を受給できます。世帯で月あたり30万円ほどの受給額であり、年金である程度の生活費を賄っていけると考えられるでしょう。
1.2 会社員(夫)×パート(妻)の場合
会社員とパートの夫婦の平均年金受給額は、以下のとおりです。
会社員とパートの夫婦の平均年金受給額2/7
出所:厚生労働省「年金制度基礎調査 / 年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年 性別・本人の現役時代の経歴類型別・本人の公的年金年金額階級別 受給者数」をもとに筆者作成
- 夫の平均年金受給額:219万4000円
- 妻の平均年金受給額:88万8000円
夫が会社員、妻がパートの場合は、妻の年金が100万円を下回るため、夫婦の受給額の差が広がります。
とはいえ、世帯で月あたり25万円程度の年金収入があるため、生活費の節約や資産の取り崩しをしていけば、老後の生活で困ることは少ないでしょう。
1.3 2人とも自営業の場合
2人とも自営業の夫婦の平均年金受給額は、以下のとおりです。
2人とも自営業の夫婦の平均年金受給額3/7
出所:厚生労働省「年金制度基礎調査 / 年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年 性別・本人の現役時代の経歴類型別・本人の公的年金年金額階級別 受給者数」をもとに筆者作成
- 夫の平均年金受給額:101万2000円
- 妻の平均年金受給額:82万5000円
夫婦2人とも自営業の場合は、夫の年金が100万円程度、妻は100万円以下となっており、これだけで老後を迎えるのはやや心許ない金額となっています。
世帯でも月15万円程度のため、国民年金基金やiDeCoといった上乗せ制度の活用が必須といえそうです。
1.4 会社員×専業主婦の場合
会社員と専業主婦の夫婦の平均年金受給額は、以下のとおりです。
会社員と専業主婦の夫婦の平均年金受給額4/7
出所:厚生労働省「年金制度基礎調査 / 年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年 性別・本人の現役時代の経歴類型別・本人の公的年金年金額階級別 受給者数」をもとに筆者作成
- 夫の平均年金受給額:219万4000円
- 妻の平均年金受給額:78万円
会社員と専業主婦の場合は、基本的に会社員の夫の年金が頼りとなります。妻は家庭に入る前の勤続年数によっては厚生年金を受け取れず、国民年金のみの支給となる場合もあるでしょう。
世帯では月あたり25万円程度の年金が受け取れますが、夫が亡くなった際に備えて、妻名義で年金や資産の積み立てをしておくとよいでしょう。
1.5 単身の会社員の場合
会社員の単身世帯の平均年金受給額は、以下のとおりです。
会社員の単身世帯の平均年金受給額5/7
出所:厚生労働省「年金制度基礎調査 / 年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年 性別・本人の現役時代の経歴類型別・本人の公的年金年金額階級別 受給者数」をもとに筆者作成
- 平均年金受給額(男性):199万円
- 平均年金受給額(女性):171万3000円
会社員の単身世帯の場合は、月額14〜17万円程度の年金が支給されます。収入は支給される年金のみですから、収入以外に柱となる資産を用意しておくと、老後生活で困るシーンが少なくなるでしょう。
では、年金から税金を引いた実質の手取り年金額について、それぞれのパターン別で検証してみましょう。
2. 一覧表つき!年金から引かれる税金は?将来の世帯ごと手取り額をシミュレーション
年金からは、所得税や住民税といった税金が差し引かれます。それぞれが差し引かれる条件は、以下のとおりです。
〈所得税〉
- 65歳未満:年間の年金受給額が108万超
- 65歳以上:年間の年金受給額が158万超
〈住民税〉
- 以下の条件をすべて満たす場合
・65歳以上
・老齢もしくは退職を理由に年金を受給
・年間の年金受給額が18万円以上
65歳以上の場合、年間の年金受給額が18万円以上で住民税が、158万円以上で所得税がそれぞれ差し引かれます。
ただし、年金には「公的年金等控除」とよばれる所得控除が存在するため、年間年金受給額が158万円以下であれば所得税が、110万円以下であれば住民税も非課税となります。
これらを踏まえて、前章で平均年金受給額を検証した5つの世帯パターンについて、それぞれの手取り年金額を確かめてみましょう。
今回は、東京都23区内に住む65歳以上の人を例に、手取り年金額を確かめます。手取り年金額は、以下のとおりです。
〈共働きで正社員の夫婦〉
- 夫
・年金額(額面):219万4000円
・所得税:3万700円
・住民税:7万1000円
・年金額(手取り):209万2300円
- 妻
・年金額(額面):140万8000円
・所得税:0円
・住民税:0円
・年金額(手取り):140万8000円
〈会社員(夫)×パート(妻)〉
- 夫
・年金額(額面):219万4000円
・所得税:3万700円
・住民税:7万1000円
・年金額(手取り):209万2300円
- 妻
・年金額(額面):88万8000円
・所得税:0円
・住民税:0円
・年金額(手取り):88万8000円
〈2人とも自営業〉
- 夫
・年金額(額面):101万2000円
・所得税:0円
・住民税:0円
・年金額(手取り):101万2000円
- 妻
・年金額(額面):82万5000円
・所得税:0円
・住民税:0円
・年金額(手取り):82万5000円
〈会社員×専業主婦〉
- 夫
・年金額(額面):219万4000円
・所得税:1万1700円
・住民税:3万8000円
・年金額(手取り):214万4300円
- 妻
・年金額(額面):78万円
・所得税:0円
・住民税:0円
・年金額(手取り):78万円
〈単身の会社員〉
- 男
・年金額(額面):199万円
・所得税:2万500円
・住民税:5万1000円
・年金額(手取り):191万8500円
- 女
・年金額(額面):171万3000円
・所得税:6650円
・住民税:2万3000円
・年金額(手取り):168万3350円
年金額の多い夫は、額面から10万円ほどが税金として引かれます。妻は年金額が少ないケースが多く、税金がかからない可能性が高いです。
なお、実際には介護保険料や国民健康保険料などの社会保険料も差し引かれます。そのため、実際の手取り額はさらに数万円低くなると考えておきましょう。
3. まとめにかえて
働き方によって、受け取れる年金額は変わってきます。特に自営業と正社員の差は大きいことがわかりました。
また、年金額によって、負担する税金や手取り収入も変わります。ただし、税金については各種控除が適用されれば大幅に減らせる可能性もあるため、年金のほとんどを手取り収入として受け取ることも可能です。
年金は老後の生活では貴重な収入源です。受け取る額が少なく生活が苦しくならないよう、働き方を見直したり私的年金を活用したりして、老後への資産を蓄えましょう。
参考資料
- 厚生労働省「年金制度基礎調査 / 年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年 性別・本人の現役時代の経歴類型別・本人の公的年金年金額階級別 受給者数」
- 国税庁「高齢者と税(年金と税)」
- 東京都主税局「個人住民税」
- 日本年金機構「年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税を特別徴収されるのはどのような人ですか。」
石上 ユウキ