物価の上昇が続いており、経済対策として8月・9月・10月に電気・ガス代の補助が実施されていますが「日々の生活が苦しくなってきている」と感じている方は多いのではないでしょうか。

とくに年金受給世帯は、収入が年金だけに限られているケースも多く、これまでの貯蓄を取り崩しながら老後の生活を過ごされている方もいらっしゃいます。

筆者はファイナンシャルアドバイザーなのですが、普段から個人の老後資金に関するご相談を数多く受けています。

現役世代の方からは、「老後の生活のイメージはつかないが、とにかくお金の面で不安」といった声を聞くことが多いです。

将来にむけて「老後どれくらいの年金をもらえるのか、どれくらいの生活費がかかるのか」がわかると、資産形成を行うのに役立ちます。

そこで今回は、65歳以上の無職世帯の貯蓄事情と家計収支をチェックしていきます。

将来資金や老後生活に向けた準備を検討する際に、ぜひお役立てください。

1. 「65歳以上・無職夫婦世帯」平均貯蓄額はいくら?

【写真1枚目/全4枚】65歳以上・無職夫婦世帯の平均貯蓄額。次の写真で「勤労世帯も含む平均貯蓄額」をチェック

65歳以上・無職夫婦世帯の平均貯蓄額

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果-(二人以上の世帯)」

総務省の調査によると、65歳以上で無職の夫婦世帯は「平均貯蓄額が2504万円」でした。

平均貯蓄額の推移は、以下のとおりです。

1.1 2018年~2023年までの「平均貯蓄額の推移」

  • 2018年:2233万円
  • 2019年:2218万円
  • 2020年:2292万円
  • 2021年:2342万円
  • 2022年:2359万円
  • 2023年:2504万円

上記グラフをご覧いただくとわかるとおり、2018年~2020年までの平均貯蓄額は2200万円台でした。

2021年からは、平均貯蓄額が2300万円に上昇しています。

さらに、2023年には平均貯蓄額が2500万円台にのぼりました。

急速な少子高齢化により、年金財政が不安定化していることも踏まえると「貯蓄額を増やした方が安全なのではないか」と考えるのはもっともです。

しかし、実生活においては物価高の影響もあり、生活費の支出増により貯蓄額が増えたという実感は得られにくい傾向にあります。

では、銀行預金以外の貯蓄はどうでしょうか。

次章で、保有資産の内訳を見ていきましょう。

1.2 保有資産の内訳

合計:2504万円

  • 有価証券:480万円
  • 生命保険など:413万円
  • 定期性預貯金:846万円
  • 通貨性預貯金:754万円
  • 金融機関外:11万円

65歳以上で無職の夫婦世帯における、保有資産の平均合計額は2504万円です。

有価証券の保有額は480万円となっており、前年比+80万円と大きく増加していることわかります。

定期性預貯金は846万円で、前年と比べ19万円減少しました。

つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)など、「税法上の優遇がある制度」も知られるようになったため、貯蓄から投資への動きは今後も加速していくと考えられます。

ここまで65歳以上の無職世帯における、貯蓄額や内訳をご紹介しました。

次章では、65歳以上の「勤労世帯も含む」世帯の貯蓄額を見ていきましょう。