現在の日本では、年金の受取開始年齢を60歳から75歳までの間で選択することができます。しかし、受給開始年齢によって生涯の年金額が確定されるため、その選択はとても重要です。

統計局による統計推定によると、2024年8月時点で60歳から64歳の人口は約754万人であるとされています。この中の多くの人が、年金開始の年齢を決定する選択を迫られていると考えられます。

では、「いつから年金を受給するのが一番お得」なのでしょうか。

本記事では、年金受給に関する基礎知識を押さえた上で、受給開始年齢の考え方や、年齢ごとの年金額の比較を具体的にシミュレーションして考察していきます。

ご自身の状況を踏まえて、ぜひ参考にしてください。

1. 公的年金の基礎知識

まず、日本の年金制度についての基本的な仕組みをご説明します。

年金制度は一般的に「3階建て」の図で説明されることが多く、その1階部分が「国民年金」、2階部分が「厚生年金」、3階部分が「その他の任意加入保険(iDecoや国民年金基金など)」です。

政府による制度は国民年金と厚生年金なので、「日本の年金制度」としては2階建ての構造だと言えます。

【写真全5枚】日本の年金制度。2枚目は日本の主な年齢の平均余命を一覧表で紹介

日本の年金制度

出所:厚生労働省「いっしょに検証!公的年金〜年金の仕組みと将来〜第4話日本の公的年金は「2階建て」」

1.1 国民年金とは

国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入する義務があり、「基礎年金」と呼ばれます。

学生である場合などに支払いを免除することもできますが、老後に満額の「老齢基礎年金」を受け取るためには、原則として40年間の保険料納付が必要です。

1.2 厚生年金とは

厚生年金は、主に会社員が加入する保険制度です。厚生年金の保険料を支払っている場合、自動的に国民年金の保険料も支払っていることになります。

保険料は給与に比例して決定され、将来的に受け取る年金額も保険料の支払額により異なります。さらに、会社員の保険料については、事業主による半額負担が義務です。

1.3 老齢年金とは

国民年金と厚生年金には、年金を受ける理由ごとに「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」が存在します。今回は、老齢となったことにより受け取ることができる「老齢基礎年金」「老齢厚生年金」について解説をしていきます。

老齢年金の受給開始は原則として65歳ですが、現在は60歳から75歳までの範囲で、自分で開始年齢を選択をすることができます。受給年齢を早くした場合は年金額が減額され、遅くした場合には年金額が増額されます。