2. 社会保険義務化の背景と主婦年金の廃止案

政府が社会保険の加入義務適用を拡大している理由には、以下のようなことが挙げられます。

  • 社会保障を充実させるため
  • 多様な働き方に対応するため
  • 主婦年金の廃止を検討しているため

パートやアルバイトで働く人は、要件を満たさない限り厚生年金保険や健康保険に加入できません。正社員であれば社会保険に必ず加入することになるため、出産時や病気になったときの手当や、老後の年金受給額に格差が生じます。社会保険に加入して誰もが平等な社会保障を受けられるよう、社会保険の適用拡大を進めているのです。

また、年収の壁がなくなることで、働き方を自由に決められるようになります。パートやアルバイトの人の中には「扶養を外れたら負担が増える」「本当はもっと働きたい」と、制度上のしがらみから自分が望む働き方ができない人もいるでしょう。自分に合った働き方ができるよう、政府は年収の壁の撤廃を進めています。

加えて、親族に扶養される人などの「国民年金第3号被保険者」が受給する「主婦年金」の廃止案も、社会保険の適用拡大の理由の一つでしょう。かつては「男性が仕事、女性が家事」といった生き方がごく普通でしたが、近年は夫婦共働きや女性の社会進出が当たり前になってきました。こうした背景から、主婦年金の役割や意義が見直されているのです。

共働き世帯の推移

共働き世帯の推移

出所:内閣府「男女共同参画白書 令和5年版」

内閣府が2024年5月23日に開催した「第6回経済財政諮問会議」では、社会保険の適用拡大や年収の壁の撤廃で「第3号被保険者制度の縮小」を図るべきとの意見も出ました。時代にあった社会保障を提供すべく、社会保険の適用拡大が進められているのです。