7. 副業・フリーランスも社会保険適用に?
社会保険の適用拡大は、副業をしている人やフリーランスにも影響をおよぼすかもしれません。たとえば、勤務先がAとBの2社あり、うち1社で社会保険に加入している人であれば、2024年10月からはAとBの2社で社会保険に加入する可能性があるのです。
複数の会社で社会保険に加入する際、保険料はそれぞれの事業所で受け取る給料を按分して決定します。どちらの会社からも保険料が差し引かれる分、手取りが少なくなる可能性があります。一方、どちらの会社でも社会保険に加入すれば年収の壁を気にする必要がなくなるため、年収アップを図れる可能性があるでしょう。
また、フリーランスに対しても社会保険の適用が検討されています。フリーランスは業務委託を受けて仕事をする事業者です。しかし、なかには就業時間や報酬などが企業の社員に準じており、まるで一社員のような働き方をする人もいます。こうした「偽装フリーランス」は十分な社会保障なく労働力を搾取されているのではないかと問題提起されているのです。
フリーランスは社会保障が手薄です。国は、社会保険を適用することで保障を手厚くし、フリーランスを保護しようと考えているようです。2024年11月1日からは「フリーランス・事業者間取引適正化等法」が施行されます。こうした法整備と合わせて社会保障の拡充も進めば、より多くのフリーランスが充実した社会保障を受けられるでしょう。
8. まとめにかえて
社会保険の適用拡大で、より多くの従業員が手厚い年金保障や医療保障を受けられます。パートやアルバイトの人が社会保険に加入できれば、出産や老後生活などのライフステージごとに受けられる保障が増え、ライフプランをよりイメージしやすくなるでしょう。
一方で、社会保険の加入により労働時間や保険料、税金の負担増加を懸念する人もいるはず。こうした方は、10月までに勤務先と社会保険の加入について相談し、今の自分に合った働き方や今後思い描くライフプランを明確にしておくとよいでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「社会保険適用拡大ガイドブック」
- 厚生労働省「厚生労働省からのお知らせ 年収の壁・支援強化パッケージ」
- 内閣府「令和6年第6回経済財政諮問会議 議事要旨」
- 日本年金機構「適用事業所と被保険者」
- 厚生労働省「複数の事業所で勤務する者、フリーランス、ギグワーカーなど、多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方について」
- 中小企業庁「フリーランスの取引に関する新しい法律が11⽉にスタート!」
石上 ユウキ