3. 暦年贈与が有利なケース

高額でかつ長期にわたって贈与できる場合、暦年贈与を選択することが有利です。相続税の計算において、相続財産や遺贈を受けない人が贈与を受けた場合、その分は7年間の持ち戻しの対象にならないため、そうした立場の人に歴年贈与することも相続対策として有効です。

相続税と贈与税のバランスを考慮し、事前に相続税額のシミュレーションを行っておくのが良いでしょう。

4. 相続時精算課税制度が有利なケース

贈与者が高齢であるなど、7年以内に相続が発生する可能性が高まっている場合は、今回改正された相続時精算課税制度の活用を検討するのが賢明です。

また、贈与者がまだ若いうちは、やや多めの額を暦年課税で贈与し、その後体調の変化や年齢が平均寿命に近づいた際に相続時精算課税制度に切り替えるという方法も効果的です。

5. まとめにかえて

2024年以降、暦年贈与と相続時精算課税制度の選択がこれまで以上に重要となります。

両制度の内容や税制改正による変更点はやや複雑です。しかし、その一方で利用可能な選択肢のバリエーションが広がったともいえます。

今後は相続税と贈与税のバランスを考慮しつつ、事前に相続税額のシミュレーションを行い、自身に最適な選択を慎重に検討することが求められます。

複雑な改正内容をしっかり理解し、多様な選択肢の中から最適な方法を選び抜くことが、将来の税負担を最小限に抑える鍵となるでしょう。

参考資料

石川 美香