5.3 人生100年時代に備えるなら75歳受給開始
95歳以降に死亡した場合、75歳受給開始の総受給額が最も多くなります。
人生100年時代といわれるようになり、平均寿命を大幅に上回って長生きすることを想定すれば、年金額(65歳受給開始の1.84倍)が多くて安心です。
ただし、85歳までに亡くなった場合、総受給額は最も少なくなります。
5.4 大半の人は65歳受給
早死リスクを考えると繰上げ受給、長生きリスクを考えると繰下げ受給がよさそうですが、どちらのリスクが高いかわからないという人も多いでしょう。
参考材料として、年金受給者の状況を確認しておきましょう。
厚生労働省の「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢厚生年金受給者の繰上げ・繰下げ受給状況は次の通りです。
- 繰上げ受給:0.7%
- 本来受給(65歳開始):97.9%
- 繰下げ受給:2.1%
老後生活に不安を感じて繰下げ受給する人の割合は増えてきていますが、大半の人は65歳からの年金受給を選択しています。
6. 加給年金が支給される場合、繰下げ受給には要注意
繰下げ受給を検討する場合、老齢厚生年金に加給年金が加算されるかどうかに注意しましょう。
繰下げ受給すると、受給開始までの加給年金がもらえなくなるからです。
加給年金とは、厚生年金に20年以上加入していた人で所定の条件を満たす配偶者や子どもがいる場合、老齢厚生年金に加算される年金です。
条件を満たす配偶者がいれば加算額は年額40万8100円(2024年度)と高額であるため、繰下げ受給は慎重に検討しましょう。
7. まとめにかえて
繰上げ受給や繰下げ受給によって受給開始年齢は60歳から75歳までの間で自由に選択できます。
受給開始年齢を検討するときは、死亡するまでの総受給額に着目しましょう。
早く亡くなると繰上げ受給、長生きすると繰下げ受給の方が総受給額が多くなります。
老後資金や老後の家計収支見通しを基にライフプランを作成し、自分の生活にあった受給開始年齢を選択しましょう。
参考資料
西岡 秀泰