2024年7月24日、厚生労働省において「令和6年度中央最低賃金審議会目安に関する小委員会(第5回)」が行われ、最低賃金が全国平均で時給1054円と決まりました。
近年は上昇を続けており、引上げ額が過去最大の50円となっています。
続く7月25日、厚生労働省は都道府県別の最低賃金額改定の目安も公表しました。
最低賃金は都道府県によっても差があるため、地域別の引上げ額に注目する方も多いでしょう。
一覧表にて見ていきます。
1. そもそも最低賃金とは?全国平均で「時給1054円」へ
厚生労働省によると、最低賃金制度とは最低賃金法に基づき、国が賃金の最低限度を定める制度です。
- 地域別最低賃金
- 特定最低賃金
上記の2種類があり、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払うこととされています。
2024年7月24日の審議会において、最低賃金が「全国平均で時給1054円」と決まりました。
政府は「2030年代半ばごろまでに1500円を目指す」としているため、今後も引上げは続いていくでしょう。
次章にて、都道府県別の改定額目安について見ていきます。
2. 2024年度「都道府県別の最低賃金額」改定の目安
2024年7月25日に行われた「第69回中央最低賃金審議会」において、今年度の地域別最低賃金額改定の目安について、答申がまとめられました。
都道府県によって経済実態が違うことを鑑み、A~Cの3ランクで引上げの目安額を公表しています。
- A:埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪
- B:北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡
- C:青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄
A~Cいずれのランクにおいても、引上げ額の目安が50円となりました。
これにより、都道府県別の目安額は以下のとおりとなります。
2.1 都道府県ごとの最低賃金の目安一覧
- 北海道 1010円
- 青森県 948円
- 岩手県 943円
- 宮城県 973円
- 秋田県 947円
- 山形県 950円
- 福島県 950円
- 茨城県 1003円
- 栃木県 1004円
- 群馬県 985円
- 埼玉県 1078円
- 千葉県 1076円
- 東京都 1163円
- 神奈川県 1162円
- 新潟県 981円
- 富山県 998円
- 石川県 983円
- 福井県 981円
- 山梨県 988円
- 長野県 998円
- 岐阜県 1000円
- 静岡県 1034円
- 愛知県 1077円
- 三重県 1023円
- 滋賀県 1017円
- 京都府 1058円
- 大阪府 1114円
- 兵庫県 1051円
- 奈良県 986円
- 和歌山県 979円
- 鳥取県 950円
- 島根県 954円
- 岡山県 982円
- 広島県 1020円
- 山口県 978円
- 徳島県 946円
- 香川県 968円
- 愛媛県 947円
- 高知県 947円
- 福岡県 991円
- 佐賀県 950円
- 長崎県 948円
- 熊本県 948円
- 大分県 949円
- 宮崎県 947円
- 鹿児島県 947円
- 沖縄県 946円
実際にはこのあと、上記の答申を参考に各地方最低賃金審議会が行われ、決定していく流れになります。
例年は発効年月日が10月になっていることから、今年も10月に実際の引上げが行われると予想されます。
最低賃金をめぐっては、
いわゆる「年収の壁」を意識せず働くことができるよう、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用を促進するほか、被用者保険の適用拡大等の見直しに取り組むことを要望する。
とあるように、年収の壁との兼ね合いが重要になります。
3. 中小企業への支援も。最低賃金とともに考えたい「年収の壁」
10月以降の最低賃金アップにより、自身の賃金が上がる可能性もあるでしょう。
しかし、年収の壁を意識して働くパートや中小企業にとっては、必ずしも喜びの声ばかりが上がるわけではありません。
扶養内でパートをしている人には、年収103万円、106万円、130万円など「月(年)での給与の上限額」があり、これを超えると自身や配偶者の税金・社会保険料が上がることになります。
つまり、世帯の手取り額が減少するという逆転現象が起こってしまうのです。
こうした「年収の壁」がある以上、もし時給があがると今度は、勤務時間や勤務日数を調整することになってしまいます。
一方、昨年は最低賃金改定で初めて1000円を超えたこともあり、「年収の壁・支援強化パッケージ」が始まりました。
短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働くことができる環境づくりを支援することが目的で、助成金を支給したり被扶養のままとどまれたりするとしています。
- 106万円の壁の対応:手取り収入を減らさない取組を行う企業に対し、労働者一人当たり最大50万円を支給します。
- 130万円の壁への対応:収入が一時的に上がっても、事業所の証明により引き続き被扶養者認定が可能となるよう配慮します。
社会保険料の負担が増えるのはパート本人だけでなく、企業も同じです。
体力の少ない中小企業などは、政府の助成なども活用しながら工夫した対策が求められていくでしょう。
4. 2024年10月に迫る社会保険適用拡大とは
現在、年収が130万円を超えると配偶者の扶養を抜け、社会保険に加入しなければなりません。
しかし一部の企業では、「130万円」ではなく「106万円」を超えると社会保険に加入することとなります。
この「対象となる事業所」の範囲が、2024年10月より51人以上の勤め先へ拡大することが決まっているのです。
該当する勤め先に勤務する従業員は、下記要件をすべて満たした際に、社会保険の加入対象者となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
- 所定内賃金が月額8万000円以上
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
これまでと違い、比較的小規模の事業所であっても、「106万円」が壁になる可能性があるのです。
最低賃金がアップすることで「106万円の壁」「130万円の壁」に到達してしまう可能性もあるため、就業時間の調整が発生してしまうことも。
「年収の壁・支援強化パッケージ」とともに、その対策を考えていく必要があるでしょう。
5. まとめにかえて
最低賃金が全国平均で時給1054円になる見込みとなり、10月から賃金が増える方もいるでしょう。
物価上昇が進むなかで賃金が上がらなかったこれまでを考えると、今後もスピードのある賃上げ対策が望まれるものです。
一方で、パートやアルバイトで働く人の中には、扶養の範囲内に収めている人も少なくありません。
世帯の手取り額を考えると、どうしても上限を超えることに抵抗があり、労働時間の調整を余儀なくされる方もいるでしょう。
政府は年収の壁に向けた施策も進めるとしており、今後の動向に注目が集まります。
参考資料
- 厚生労働省「最低賃金制度の概要」
- 厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」
- 厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト」
- 厚生労働省「令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)」
- 首相官邸「令和6年7月25日(木)午前 内閣官房長官記者会見」
- 厚生労働省「令和6年度中央最低賃金審議会目安に関する小委員会(第5回)資料」
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
- 厚生労働省「令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について」
太田 彩子