5. 定額減税二重取りに対する政府の見解

政府は、定額減税の二重取りについて、基本的に「容認」としています。7月12日の定例閣議後の記者会見で、鈴木俊一財務大臣が容認を示す発言をしたためです。

鈴木財務大臣の記者会見での発言要旨は、以下のとおりです。

鈴木財務大臣の記者会見での発言要旨

鈴木財務大臣の記者会見での発言要旨

出所:財務省「鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要(令和6年7月12日(金曜日))」をもとに筆者作成

〈鈴木財務大臣の記者会見の発言要旨〉

  • 重複を認めないという考え方に立たなかったことについて、国民にご理解いただきたいと考えている。
  • 不公平といった指摘があるのは承知しており、定額減税を重複して受けるケースが生じることについては指摘のとおり。
  • 一方で、例外ケースを防ぐには、源泉徴収義務者である企業や地方自治体の事務コストが膨大になる恐れがある。
  • 公平性への配慮も重要だが、同時に定額減税は一時的な措置であるため、企業や地方自治体の担当者の事務負担に配慮するのも重要と考えている。

政府が定額減税の二重取りを容認しているのは、企業や地方自治体の事務者の負担を考慮したためです。

定額減税は今回限りの措置であるため、これ以上担当者の事務負担を増やすと、本来しなければならない業務が疎かになる可能性があります。

多くの人に多大な負担を強いることとなるため、容認せざるを得ない状況になっているといえるでしょう。

不公平感はありますが、財務省トップがこのように発言したことから、今後二重取りの容認が撤回される可能性は低いと考えられます。

6. まとめにかえて

今回の定額減税は、公表当初こそ国民の期待が寄せられましたが、仕組みが複雑な点や公平性を担保できなかった点から、今後の経済政策への課題を残す結果となりました。

加えて、実際に定額減税の事務にあたった企業や地方自治体の事務担当者の負担も、決して小さなものではなかったでしょう。

なかには「国民への一括給付にすべきだった」「よりシンプルな制度組み立てが必要」といった意見も見られました。

こうした意見が、次のフェーズへ進むための経済施策に反映されることを願うばかりです。

参考資料

石上 ユウキ