2. 70歳まで働くと年金は増える?

年金支給額は納付期間と収入に基づいて計算されるので、70歳まで働くことができれば年金額が増加します。

加えて、年金の受給開始年齢を70歳まで繰り下げることで、受け取れる年金額をさらに増やすことが可能です。

年金は原則として65歳から受け取ることができますが、受給開始年齢は66歳以降75歳までの間で繰り下げることができ、1ヶ月繰り下げるごとに給付額が0.7%ずつ増額されます。

したがって、受給開始年齢を70歳まで繰り下げた場合の増額率は42%となり、65歳で受給開始するケースに比べて年金額は大きく増加します。

あくまでも一例ですが、65歳の時点での受給額が約20万円だった場合、70歳まで繰り下げてから受給すれば、約28万4000円に増額されることになります。

一見するとメリットが大きい繰下げ受給ですが、実際に選択している人はどのくらいいるのでしょうか。

3. 繰下げ受給を選択している人はごくわずか

厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金の繰上げ・繰下げ受給状況の推移を見てみます。

受給権者の繰上げ・繰下げ受給状況の推移

出所:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

  • 繰上げ受給者:20万6757人(0.7%)
  • 繰下げ受給者:37万4481人(1.3%)

2022年度(令和4年度)の時点では、65歳から受給している人が97.9%、繰下げ受給を選択している人が1.3%となっています。

繰下げ受給を選択している人は徐々に増えてきているものの、全体の比率としてはごくわずかです。

また、年度末時点で70歳を迎えている人の受給状況を見ると、繰下げ受給を選択している人は2.1%となっています。

70歳の繰上げ・繰下げ受給状況の推移

出所:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

では、年金額が大きく増えるにもかかわらず、繰下げ受給を選択する人が少ないのは何故でしょうか。

単純に「繰下げ受給」という方法が浸透していない、そもそも70歳まで働きたくないなど、理由は様々だと思いますが、実は繰下げ受給にはデメリットや注意点もあるのです。