2024年7月3日、厚生労働省は5年に1度実施している「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」の最新の結果を公表しました。

物価高による年金額増加で年金保険料の納付額も増えていることから、年金制度の運営状況には、大きな注目が集まっています。

前回の検証が行われた2019年には「年金が現役時代の所得額に対して50%を下回る可能性はない」「年金受給額は賃金の伸びにより今後も増加の見込み」との結果が公表されました。

果たして、今回の検証結果はどのようなものだったのでしょうか。

この記事では、2024年の年金「財政検証」の結果について、ポイントを絞って解説します。

後半では、現在の年金受給額がどれくらいなのかについても確かめます。年金制度のあり方について、検証結果を踏まえながら今一度考えてみましょう。

1. 「財政検証」の結果まとめ

2024年の年金財政検証の結果は、以下のとおりでした。

  1. 公的年金の所得代替率の試算結果は低成長の場合でも50.4%であり、現役時代の所得の約半分を年金で賄える
  2. 20〜30年後も年金水準はおおむね守られるが、あくまで物価に対して賃金の伸びが上回っている状態でなければ目減りの可能性もある
  3. 国民年金保険料の納付期間を40年から45年に延長する案は見送りとなった

※所得代替率:65歳時点で受給できる年金額が、現役中の所得の何%に相当するかを表した指標のこと。

※マクロ経済スライド:現役世代の負担が重くならないよう、保険料負担の水準を定め、その中で保険料等の収入と年金給付等の支出のバランスが保たれるよう、時間をかけて緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みのこと。2004年より導入。

検証では、将来の年金受給額は今後日本が高成長、安定成長、低成長のいずれの経済情勢となっても、現役時代の所得の半分以上は受け取れるという試算結果が出ました。

また、20〜30年後に今の現役世代が年金を受け取る際は、年金水準はおおむね守られる仕組みになっていることもわかりました。

ただし、試算は賃金が物価を上回ることを想定して行われているものであり、物価が賃金上昇を上回っている場合は、年金額が実質目減りする可能性もあると考えられます。

そして、国民年金保険料の納付期間を40年から45年に延長する案は審議は見送りとなりました。

保険料の納付額が増える一方で年金受給額も増える試算がされていましたが、ほかの改革案で給付額の底上げが見込まれることや負担が増えることへの反発などから、今回の審議案では議論されませんでした。