「老後2000万円問題」が話題となりましたが、加えて近年の物価の上昇もあり、ますます老後への不安を感じている方も少なくないでしょう。

そのような中で、一般的な退職年齢とされている65歳以降も「働き続ける」と考えている方も多いのではないでしょうか。

実際に高齢者の中には、定年退職後も再雇用や定年延長で働く人が増加しています。またそれらを受け入れる企業も同様に増えてきています。

65歳以降に、年金収入に加えて労働収入もあればかなり老後の生活にゆとりが出そうです。しかし、働きながら年金を受給する「在職老齢年金」には落とし穴があります。

給与や賞与が高すぎると年金の支給が停止される可能性があります。そこで本記事では、「在職老齢年金」のしくみや計算方法を解説していきます。

1. 【おさらい】「在職老齢年金」とはどんなもの?

「在職老齢年金」は、60歳を超えて老齢厚生年金を受給しながら働く方に対し、一部または全部の年金が減額される制度です。

具体的には、70歳未満の方が会社に就職して厚生年金制度に加入した場合や、70歳以上の方が厚生年金の適用事業所で働く場合に適用されます。

現在のシニア世代の年金事情を見ると、公的年金だけでは老後の生活を賄えないという理由で働く方が多いことがわかります。

ただし、給与や賞与などの報酬が高すぎると年金の支給が停止される可能性があるため、注意しましょう。

1.1 【2024年度】在職老齢年金の計算式について

在職老齢年金では、老齢厚生年金の「基本月額」と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額が支給停止となります。

「基本月額」とは、加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額を指します。「総報酬月額相当額」とは、その月の標準報酬月額に、その月以前1年間の標準賞与額の合計を12で割ったものを加えた額です。

基本月額と総報酬月額相当額の合計が支給停止調整額を超える場合、年金は支給停止(支給調整)となります。

基本的な計算式は以下の通りです。

基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-支給停止調整額)÷2

このように、支給停止調整額を考慮しながら働かないと、年金が減額されてしまいます。

では、支給停止調整額はいくらになるのでしょうか。次の章からは、2024年度から改定される支給停止調整額について、シミュレーションも交えながら確認してみましょう。