厚生労働省は2024年6月27日、2023年度における「国民年金の加入・保険料納付状況」を公表しました。

納付率は前年より1.6%増の77.6%となり、過去最高となっています。

なお、未納分を遡って納付できる過去2年分を集計した「最終納付率」は83.1%で前年比2.4増。こちらも過去最高です。

納付率の詳細を確認するとともに、受け取れる「老齢年金」の平均額も見ていきましょう。

1. 国民年金保険料の納付率が過去最高へ

厚生労働省「令和5年度の国民年金の加入・保険料納付状況について」によると、国民年金保険料の納付率は過去最高となりました。

  • 現年度納付率:77.6%
  • 最終納付率:83.1%

最終納付率とは、未納分を遡って納付できる過去2年分も集計した数値です。

日本年金機構が発足した2010年は60%台だったので、着実に伸びていることがわかります。

効果のあった取り組みとして、クレジットカード払いやスマホ決済に対応するなど、納付しやすい環境づくりがあげられました。

日本は国民皆年金制度のため、誰もが公的年金に加入します。ただし、全員が国民年金保険料を支払わなければいけないわけではありません。

第1号被保険者~第3号被保険者のうち、本資料でも対象になっているのは第1号被保険者のみです。次章にてくわしくみていきましょう。

2. 公的年金のしくみ「国民年金保険料を支払わないといけないのは誰?」

日本の年金制度は「国民年金」と「厚生年金」があり、2階建ての構造となっています。

年金制度のしくみ2/3

年金制度のしくみ図

出所:LIMO編集部作成

1階部分にあたる国民年金には日本に住む20歳~60歳未満のすべての人が加入しますが、働き方等によって3つにわかれます。

  • 第1号被保険者:自営業や20歳以上の学生など
  • 第2号被保険者:会社員や公務員など厚生年金の加入者
  • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養される配偶者

第2号被保険者は2階部分の厚生年金に加入し、厚生年金保険料として支払います(給与天引き)。また、第3号被保険者は保険料を支払う必要がありません。

そのため、国民年金保険料を単体で支払うのは第1号被保険者だけとなります。

厚生年金の加入要件が緩和されたことにより、国民年金の加入者は減少傾向にあります。

3. 「国民年金と厚生年金」2024年度の老齢年金は増額へ

保険料を納めることによって、将来はどれほどの年金が受け取れるのか気になる方が多いでしょう。

2024年度は2年連続の増額改定となり、国民年金は1人あたり月額6万8000円となりました。

続いて2階部分の厚生年金の支給額ですが、こちらは現役時代の報酬や加入期間によって決まるため、一律ではありません。

参考までに、「夫が厚生年金で妻が国民年金の標準的な夫婦」という場合、厚生労働省の試算では夫婦2人分で23万483円となりました。

2024年度の年金額の例3/3

2024年度の年金額の例

出所:厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

ただし、この夫婦の年金は”平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で 40年間就業した場合、受け取り始める「老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額)」”という条件のもと試算されたものなので、当てはまらない方が多いでしょう。

厚生労働省の別の資料から、現役時代の報酬ごとに「単身世帯」「夫婦」の厚生年金例も確認していきます。

3.1 現役時代の報酬ごとの「単身世帯」の年金例

厚生労働省「これまでの年金部会も踏まえてご議論いただきたい論点」という資料によると、報酬ごとの年金例は次のとおりでした。

  • 報酬54万9000円:18万6104円 
  • 報酬43万9000円:16万2483円 
  • 報酬37万4000円:14万8617円
  • 報酬32万9000円:13万8862円
  • 報酬30万円:13万2494円 
  • 報酬22万5000円:11万6370円 
  • 報酬14万2000円: 9万8484円 

3.2 現役時代の「夫婦の収入ごと」の年金例

  • 夫が報酬54万9000円+妻が報酬37万4000円:33万4721円
  • 夫が報酬43万9000円+妻が報酬30万円:29万4977円
  • 夫が報酬32万9000円+妻が報酬22万5000円:25万5232円
  • 夫が報酬54万9000円+妻が短時間労働者の平均的な収入:28万4588円
  • 夫が報酬43万9000円+妻が短時間労働者の平均的な収入:26万967円
  • 夫が報酬32万9000円+妻が短時間労働者の平均的な収入:23万7346円
  • 妻が報酬37万4000円+夫が短時間労働者の平均的な収入:24万7101円
  • 妻が報酬30万円+夫が短時間労働者の平均的な収入:23万978円
  • 妻が報酬22万5000円+夫が短時間労働者の平均的な収入:21万4854円
  • 夫婦ともに短時間労働者だった場合の平均的な収入:19万6968円
  • 夫が報酬54万9000円+妻が国民年金のみ加入:25万4104円
  • 夫が報酬43万9000円+妻が国民年金のみ加入:23万483円
  • 夫が報酬32万9000円+妻が国民年金のみ加入:20万6862円
  • 妻が報酬37万4000円+夫が国民年金のみ加入:21万6617円
  • 妻が報酬30万円+夫が国民年金のみ加入:20万494円
  • 妻が報酬22万5000円+夫が国民年金のみ加入:18万4370円

国民年金のみの加入であれば、保険料が1万6980円で受給できる年金が6万8000円(いずれも2024年度における月額水準)。

そこに厚生年金の上乗せがあるか、あるなら報酬はいくらなのかによって、老齢年金額は大きく変わります。

年金だけで老後生活を迎えるのは心もとないため、何らかの老後対策をしている人が多いのではないでしょうか。

4. 年金だけで生活している世帯は半分以下

多くの方は、「年金だけで生活できない」と考えていると思います。

たしかに、厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、100%年金だけで生活している人は全体の44%となりました。

4.1 年金だけで生活している世帯の割合一覧

年金だけで生活している人の割合

年金だけで生活している人の割合

出所:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」
 

 

 

  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%:44.0%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80%~100%未満:16.5%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満:13.9%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満:13.5%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~60%未満:8.5%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満:3.6%

半数以上の高齢者は、年金だけでは生活できず収入や仕送り、貯蓄の切り崩しを行っている現状にあります。

最近ではNISAやiDeCoなど、税制優遇のある制度も人気となっているため、あらゆる方法で備え始めている方が多いでしょう。

ただし、中には「公的年金はもらえるかわからないから、自分で備える」という考えで保険料を未納にする方がいます。

納付率が100%にならないのも、そのような意見があるからかもしれません。

しかし、公的年金は確かに生活を100%支えてくれるものではありませんが、終身でお金がもらえる制度であり、保険という保障の性質もあります。

民間の保険で同様に備えるのは難しいため、公的制度の足りないものを独自に備えるという視点が大切です。

なお、年金保険料を未納にすると滞納扱いとなり、最悪は財産の差し押さえ対象になります。経済的に厳しいという場合は、必ず窓口に相談するようにしましょう。

5. 公的年金+αの備えを考えよう

厚生労働省が公表した資料によると、国民年金保険料の納付率が過去最高となりました。

一方で、物価上昇に伴い生活が圧迫されている世帯は多いです。社会保険料の負担も高まる一方で、どれほどの年金がもらえるのか不満が高まる人もいるでしょう。

国民年金の場合、満額は月額で6万8000円。これだけでは生活するのが難しいため、独自に備える人が多いです。

年金の保険機能にも着目しつつ、年金について正しく理解しておきましょう。

【編集部よりご参考】

参考までに、厚生年金の平均額は額面で14万3973円、国民年金の平均額は額面で5万6316円です。

ただし、実際の受給額は個人差が大きいのが特徴なので、受給額ごとの人数もご紹介します。

厚生年金受給額ごとの人数

  • 1万円未満:6万1358人
  • 1万円以上~2万円未満:1万5728人
  • 2万円以上~3万円未満:5万4921人
  • 3万円以上~4万円未満:9万5172人
  • 4万円以上~5万円未満:10万2402人
  • 5万円以上~6万円未満:15万2773人
  • 6万円以上~7万円未満:41万1749人
  • 7万円以上~8万円未満:68万7473人
  • 8万円以上~9万円未満:92万8511人
  • 9万円以上~10万円未満:112万3972人
  • 10万円以上~11万円未満:112万7493人
  • 11万円以上~12万円未満:103万4254人
  • 12万円以上~13万円未満:94万5662人
  • 13万円以上~14万円未満:92万5503人
  • 14万円以上~15万円未満:95万3156人
  • 15万円以上~16万円未満:99万4044人
  • 16万円以上~17万円未満:104万730人
  • 17万円以上~18万円未満:105万8410人
  • 18万円以上~19万円未満:101万554人
  • 19万円以上~20万円未満:90万9998人
  • 20万円以上~21万円未満:75万9086人
  • 21万円以上~22万円未満:56万9206人
  • 22万円以上~23万円未満:38万3582人
  • 23万円以上~24万円未満:25万3529人
  • 24万円以上~25万円未満:16万6281人
  • 25万円以上~26万円未満:10万2291人
  • 26万円以上~27万円未満:5万9766人
  • 27万円以上~28万円未満:3万3463人
  • 28万円以上~29万円未満:1万5793人
  • 29万円以上~30万円未満:7351人
  • 30万円以上~:1万2490人

国民年金受給額ごとの人数

  • 1万円未満:6万5660人
  • 1万円以上~2万円未満:27万4330人
  • 2万円以上~3万円未満:88万1065人
  • 3万円以上~4万円未満:266万1520人
  • 4万円以上~5万円未満:465万5774人
  • 5万円以上~6万円未満:824万6178人
  • 6万円以上~7万円未満:1484万7491人
  • 7万円以上~:178万3609人

参考資料