5. 老後資金のための賢い資産配分の考え方とは
ここまでの調査結果から、65歳以上の人々の貯蓄額と収支を見てきました。老後資金として2000万円以上を用意できている人は比較的多い一方で、4000万円以上となると不足する人が大多数です。今後の物価上昇を考慮すると、さらなる資産形成が必要です。
5.1 資産形成する上で理解しておきたい投資対象
調査結果によると、預貯金が大半を占め、有価証券の割合はわずか約19%です。これでは資産全体が物価上昇に対応できず、資産価値が目減りする可能性もあるため、有価証券の割合を増やすことが望まれます。
昨今は資産形成の方法の一つとして、新NISAやiDecoの制度を活用する人が増えています。そこで、投資信託での投資を前提として投資対象について考えていきましょう。
投資対象の資産と地域は以下のように分けることができます
投資対象の資産
- 株式
- 債券
- REIT(不動産投資信託)
投資対象の地域
- 日本国内
- 先進国
- 新興国
投資対象のリスク
投資対象にはリスクが異なります。一般的なリスク傾向は以下の通りです。
- 株式:ハイリスク・ハイリターン
- 債券:ローリスク・ローリターン
- REIT:ミドルリスク・ミドルリターン
資産形成する際は、どれか一つを選ぶのではなく、これらを組み合わせることが重要です。また、年齢によってリスク許容度は異なります。一般的には、定年に近づくにつれて徐々にローリスク・ローリターンの資産の比率を増やしていくことが理想的と言われています。
自分自身のリスク許容度とライフステージに合わせたアセットアロケーションを検討しましょう。
6. 今のうちからコツコツと老後資金の準備を
本記事では、65歳以上の無職世帯の貯蓄事情について紹介していきました。
65歳以上の貯蓄の内訳をみると、大半が預貯金を占めており、投資信託や株式などの資産運用は1割程度となっています。
近年では少額投資や積立投資など、比較的リスクを抑えながら投資を始められる商品・サービスが増えており、iDeCoやNISAといった国が主導となって実施されている制度もあります。
これら制度を活用すれば、税制上の優遇を受けながら投資をすることも可能であるため、老後の生活資金を安定的に確保するためにも、預貯金だけでなく、株式や投資信託なども取り入れた資産管理をしていけると良いでしょう。
【編集部よりご参考】
記事内にて厚生年金と国民年金の平均額をご紹介しました。
ただし、実際の受給額は個人差が大きいのが特徴です。参考までに、受給額ごとの人数もご紹介します。
厚生年金受給額ごとの人数
- 1万円未満:6万1358人
- 1万円以上~2万円未満:1万5728人
- 2万円以上~3万円未満:5万4921人
- 3万円以上~4万円未満:9万5172人
- 4万円以上~5万円未満:10万2402人
- 5万円以上~6万円未満:15万2773人
- 6万円以上~7万円未満:41万1749人
- 7万円以上~8万円未満:68万7473人
- 8万円以上~9万円未満:92万8511人
- 9万円以上~10万円未満:112万3972人
- 10万円以上~11万円未満:112万7493人
- 11万円以上~12万円未満:103万4254人
- 12万円以上~13万円未満:94万5662人
- 13万円以上~14万円未満:92万5503人
- 14万円以上~15万円未満:95万3156人
- 15万円以上~16万円未満:99万4044人
- 16万円以上~17万円未満:104万730人
- 17万円以上~18万円未満:105万8410人
- 18万円以上~19万円未満:101万554人
- 19万円以上~20万円未満:90万9998人
- 20万円以上~21万円未満:75万9086人
- 21万円以上~22万円未満:56万9206人
- 22万円以上~23万円未満:38万3582人
- 23万円以上~24万円未満:25万3529人
- 24万円以上~25万円未満:16万6281人
- 25万円以上~26万円未満:10万2291人
- 26万円以上~27万円未満:5万9766人
- 27万円以上~28万円未満:3万3463人
- 28万円以上~29万円未満:1万5793人
- 29万円以上~30万円未満:7351人
- 30万円以上~:1万2490人
国民年金受給額ごとの人数
- 1万円未満:6万5660人
- 1万円以上~2万円未満:27万4330人
- 2万円以上~3万円未満:88万1065人
- 3万円以上~4万円未満:266万1520人
- 4万円以上~5万円未満:465万5774人
- 5万円以上~6万円未満:824万6178人
- 6万円以上~7万円未満:1484万7491人
- 7万円以上~:178万3609人
参考資料
- 総務省統計局「家計調査 / 貯蓄・負債編 二人以上の世帯 詳細結果表」
- 総務省統計局「家計調査報告 貯蓄・負債編 2023年(令和5年)平均結果の概要 (二人以上の世帯)」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
- 総務省「2020年基準消費者物価指数 全国2024年(令和6年)4月分」
LIMO編集部